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トランプは多極化(アメリカ覇権の放棄)を目指している。

アメリカ隷属のみでは、これからの世界で韓国以下の序列になるのでわないか。
オーストラリア、ニュージーランド、フィリピン、ベトナム、台湾と共に西太平洋同盟の構築を急ぐべきとかんがえる。

以下」
国連総会の128対9対35は何を意味しているか
田中良紹 | ジャーナリスト
2017/12/24(日) 14:54 から転載

フーテン老人世直し録(345)

極月某日

 国連は21日に緊急総会を開き、米国がエルサレムをイスラエルの首都と認定したことの撤回を求める決議案を採決した。結果は日本を含むロシア、中国、英国、フランス、ドイツなど賛成128か国、反対は米国、イスラエル、パラオなど9か国、棄権はオーストラリア、カナダ、メキシコなど35か国で、国際社会を主導してきた米国の孤立が鮮明になった。

 翌22日に国連安全保障理事会は米国の北朝鮮に対する追加制裁決議案を全会一致で採決したが、しかし米国はぎりぎりまで中国、ロシアと協議を行い、外貨を稼ぐために国外で働く北朝鮮労働者の送還ではロシアの要求を受け入れ1年以内を2年以内に延長、また中国から北朝鮮への原油供給についても中国の意向を入れて「禁止」に踏み込まなかった。

 年末ぎりぎりに行われたこの2つの国連決議を見る時、1991年にソ連が崩壊して唯一の超大国となった米国が「新世界秩序」を求め世界の一極支配を目指したことが幻だったかのように思える。良くも悪くも世界のリーダーであった米国の姿がもはや見えない。

 トランプ大統領は「アメリカ・ファースト」を繰り返し叫ぶことで米国民に満足感を与えながら、しかし中東とアジアで騒乱の種を播き散らし、その解決を米国が一国で背負うのではなく他国の手に、とりわけ中国とロシアに背負わせようとしている。

 エルサレムをイスラエルの首都と認めたことは米国が中東和平の仲介役を放棄したことを意味すると以前のブログに書いた。逆に言えばトランプ大統領は米国が仲介役を降りるためにエルサレム問題を持ち出した可能性がある。米国が降りれば中東地域におけるロシアと中国の存在感は増し、和平交渉の仲介役は米国単独から米中ロ三極になる。

 一方の北朝鮮問題でも、軍事オプションをちらつかせて米国が北朝鮮に戦争を仕掛ける状況を作りながら、しかし北朝鮮を背後から支える中国とロシアに対しては国連の制裁決議に賛同できるよう顔を立てる。米国中心で解決しようとはしていない。

 勿論、こうした考えとは異なる見方を主張することもできる。エルサレム問題はアラバマ州の上院補選で宗教保守の票を得たいための国内向け発言とか、北朝鮮問題でも年明けには本気で戦争する気があると言う人もいる。

 しかし上院補選で票を得るために世界のリーダー役を降りるのか、また中国、ロシアと国境を接する北朝鮮に本気で戦争をやりに行くかと言えば、可能性は極めて低いとフーテンは思う。

 トランプ政権のロシアや中国に対する姿勢は冷戦崩壊後のクリントン、ブッシュ(子)、オバマの歴代政権とは真逆である。米国が一時期目指した一極支配という目的を捨て去り、多極構造の世界を作ることをトランプ大統領は使命と考えているのではないかという気がする。

 冷戦終了後の米国議会を見てきたフーテンは、一極支配を目指す米国の帝国主義的な動きを様々な角度から見てきた。そのせいかトランプ大統領の言動もその延長上で捉えてきた。だから他のメディアと同様にトランプ大統領を言うこととやることがバラバラの「予測不能」の大統領と考えてきた。

 しかし一極支配を目指した米国から脱却するための言動だと考えれば、言うこととやることがバラバラな理由も理解することができる。それまでの路線を変えるという作業は全く単純ではないからだ。

 それまでの路線を支持する者もその利益に預かっている者も数は多く、しかもそれが主流派を形成している。その中で路線を変えるには、それらの者を満足させながら、しかし気がつけば路線が変わっていた形にもっていく必要がある。最初から目的を明確に示せば多数の主流派にすぐに潰されて終わりになるだけだ。

 その作業をやるにはトランプ大統領のキャラクターがうってつけかもしれない。まず政治の素人であるから何を言っても何をやっても仕方がないと思われる。そのうえ論理的でも真面目でもないから大胆にふるまえる。常識的な大統領を演ずる必要がなく目くらましがやりやすい。

 これまでの米国はソ連が崩壊したで世界を一国で支配しようと考えてきた。92年にペンタゴンが作成した機密文書「国防計画指針(DPG)」は、「米国に対抗できる能力を持つ国を絶対に許さない」との方針を示し、ロシア、中国、日本、ドイツを「仮想敵」と規定した。

 93年に誕生したクリントン政権はまず日本経済の弱体化に取り組む。「年次改革要望書」によって日本の経済構造を米国に都合の良いように変え、一方で日本をけん制するため米国は中国経済と緊密な関係を持った。

 そして経済では中国と協調しながら安全保障面では中国、北朝鮮と敵対する。そのため日米安保体制を強化してアジアに10万の米軍を配備した。また「人道目的なら国連決議なしでも武力行使ができる」と宣言し、米国は「世界の警察官」として単独で米国の価値観を世界に広めようとした。米国が中東和平の仲介者となり「オスロ合意」を取り付けたのもこの時代である。

 次にネオコンやキリスト教原理主義の影響を受けたブッシュ(子)大統領が登場すると、本土が9・11同時多発テロに襲われたことから、米国はアフガニスタンとイラクに戦争を仕掛ける。中でもイラクとの戦争は嘘の情報をもとにした先制攻撃で、それがイスラム原理主義との泥沼の戦いに米国を引きずり込む。

 一方で米国経済は大恐慌以来の破たんに見舞われ、戦争と経済不況で大統領不支持率は戦後最悪を記録した。またブッシュ大統領がイラン、イラク、北朝鮮を「悪の枢軸」と呼んだことで米国の先制攻撃を恐れた北朝鮮は本格的な核武装に踏み切る。

 オバマは中東から米軍を撤退させるために選ばれた大統領である。軍の代わりにCIAなど情報機関を使った作戦でビンラディン容疑者を暗殺し、力を中東から中国が台頭するアジアに振り向ける戦略を採った。

 しかしウクライナやシリア問題でロシアと対立、南シナ海問題で中国と敵対するなど「新冷戦」と呼ばれる世界分断の中で米国の覇権を維持しようと模索した。その構造を変えようとするのがトランプ大統領である。

 就任前からロシアとの関係修復や、中国包囲網と言われるTPPからの脱退を宣言していた。しかし側近には反中国が鮮明な人間もおりスタンスが明確だったわけではない。それが11月のアジア歴訪では中国が最大の外交舞台になった。それを見ると表と裏を使い分けながら一筋縄ではいかない外交を展開していくように見える。

 かつてニクソン政権は泥沼となったベトナム戦争から手を引くため、それまでの東西冷戦構造を終わらせる目的で誰もが予想しなかった米中接近を秘密裏に行った。中心にいたのはキッシンジャーである。その彼がトランプ大統領の背後にいて、これまで米国が目指した一極支配体制を転換させる役割を担っている可能性がある。

 あの時も米中接近は日本の頭越しに行われ、日本は大混乱して「ニクソン・ショック」と呼ばれた。一極支配の米国とつるんで行けば安泰だと考えるだけでは再び「ショック」に見舞われるかもしれない。多極化の中でどう生きるかに頭を切り替えないと、大きな間違いを犯す可能性がある。国連総会の2つの決議を見てフーテンはそれを感じた。
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田中宇史観:世界帝国から多極化へ

田中宇史観:世界帝国から多極化へ
2017年10月13日   田中 宇

 国際政治で最も重要な視点は「覇権」だ。覇権とは、ある国(覇権国)が他の国(従属国)に対し、軍事占領や植民地化といった具体的な支配方法によってでなく、もっと隠然と影響力を行使して、事実上支配する行為や状態のことだ。20世紀初頭まで(前近代。大英帝国の覇権の時代まで)は、軍事占領や植民地といった露骨な国際支配が認められていたが、その後、2度の大戦を経て、世界のすべての地域の人々が独立国家を持つ状態が作られ、すべての国家が平等であり、ある国家が他の国家を支配してはならないという国際秩序が作られた。露骨な国際支配は国際法違反とされ、国連によって制裁される建前になった。 (覇権の起源)

 だが、その後も、強い国が弱い国々を支配する状態は変わっていない。植民地や軍事占領でなく、隠然とした覇権のかたちで支配が続いている。ゴリゴリの対米従属である戦後の日本が象徴的だ。覇権は隠然としており、公式には存在していないことになっているので分析が難しい。戦後の日本では(自国の対米従属を隠蔽するため)覇権分析が正当な学問とみなされていない。 (日本の官僚支配と沖縄米軍)

 私が見るところ、覇権には、地域覇権と世界覇権の2種類がある。近代以前の言い方をするなら、地域帝国と世界帝国の2種類だ。地域覇権・地域帝国は、強い国が、自国の周辺の(もしくは経済的、思想信条的につながりがある)弱い国を支配するものだ。強い国の視点に立って存在している。これと対照的に、世界覇権・世界帝国は、先に「世界」という枠組みが存在し、その全体をどうやって支配するかという戦略やグランドデザインの問題になる。

 地域覇権・地域帝国の最も顕著な例は中国だ。ユーラシア東部の「陸の大国」である中国は、古代から、地理的な必然性として、自国の安定を維持するため、自国の辺境やその先の周辺諸国を支配する必要があった。中国帝国が強い時代は版図が大きくなり、中国が弱体化すると版図も小さくなり、中国自も内部分裂する。現在の習近平の中国は、史上最大に近い影響圏・版図だ(モンゴル帝国に次ぐ広さ)。中国という存在が先にあり、中国自身の強さに応じて帝国の広さや状況が変わる。 (600年ぶりの中国の世界覇権)

 これに対し、世界帝国は、欧州人(スペイン、ポルトガル、英国など)が、15-16世紀の「地理上の発見」によって、世界のかたち(球形)や大きさを、人類史上初めて公式に把握したところから始まっている。中華帝国やローマ帝国は、世界がどのくらいの広さかに関係なく運営されていたが、スペインポルトガル以降の欧州人の世界帝国は、そうでない。先に世界が「発見」され、どうやってそのすべてを支配するかを考案し続けるという、概念や戦略が先行したのが世界帝国・世界覇権である。 (米中逆転・序章)

 世界を「発見」した直後、スペイン1か国で支配するには広すぎたので、スペインとポルトガルで談合して世界を分割した。それでも帆船で世界を支配するのは難儀で、細長い航路の周辺しか支配できなかった。効率の良い世界支配への技術革新が続けられ、18世紀に英国で蒸気機関が開発され、汽船や鉄道が誕生し、交通の効率が飛躍的に向上した。世界帝国の運営が一気に効率的になり、産業革命をなしとげた英国が世界帝国(大英帝国)の所有者・運営者となった。産業革命は、鉄鋼の生産効率の向上、軍事力の増大にもつながり、オスマントルコや中国の清朝といった欧州以外の地域帝国を次々と潰し、欧州人による世界支配が確立した。 (世界史解読:欧州の勃興)

▼産業革命後、世界帝国は世界市場になった

 産業革命は、世界帝国(大英帝国)を強化したが、同時に、帝国を解体する方向の要素としても働いた。それまでの世界帝国の運営は、支配地域からの略奪か、もしくは欧州で売れる物品の採掘や栽培を植民地に強要するやり方だったが、産業革命によって欧州の工業製品の生産力が急拡大すると、欧州が作った工業製品を買わせる市場として、植民地が重要になった。植民地の人々を、工業製品を買える「消費者」に仕立てるには、まず植民地の人々をある程度豊かにして、貧困層を脱して中産階級にしてやらねばならない。それまでの、植民地からできるだけ収奪しようとする戦略からの転換が必要になった。 (資本主義の歴史を再考する)

 もう一つ、産業革命を実現した投資家たちがやりたがった、大英帝国の解体につながる事業が、産業革命を英国から全世界に広げていくことだった。産業革命は、経済を急成長させ、投資家を大儲けさせるが、20-50年たって産業革命(工業化)が一段落すると、成長が鈍化して儲けが減る。儲けを極大化するには、いつまでも英国だけに投資するのでなく、まだ産業革命を経験していない、貧困で「遅れた」地域に投資して産業革命を誘発する必要がある。長期的に、投資家は「焼き畑農業」のように、次々と新たな新天地に投資を移していく必要がある。

 植民地を工業化すると、経済発展し、人々が豊かになって「消費者」になる。植民地を消費地にすることと、資本家の焼き畑農業戦略は、同一の趣旨を持っていた。植民地を経済発展させるには、宗主国が好き勝手に植民地を一方的に収奪されてきた状態を壊す必要がある。産業革命後、資本家にとって、世界帝国は、世界市場に変質した。この変質、世界帝国(大英帝国)の解体のために扇動されたのが、19世紀末からの世界的な「植民地独立」を求める政治運動だった。

 植民地独立の世界的な運動は、植民地の人々が政治的に覚醒して民族自決の意識を持つようになり、欧州の宗主国の人々が、それを「人権重視」の理想主義の観点から支持容認した結果であると、教科書で説明されている。だが、英国など欧州の宗主国は、植民地の人々を政治覚醒させぬよう、細心の注意を払っていたはずだ。しかも、事態を動かす力は、理想主義より現実の利害の方がはるかに強い。植民地の人々が独立を求めるようになったのは、植民地の人々が頑張ったからというより、宗主国の資本家が、儲けを増やすため、宗主国政府の植民地運営の方針にこっそり逆らって、植民地の独立運動を煽ったからだと考えられる。正史が理想主義史観を採るのは、その方が人々のやる気を鼓舞し、社会的な効率が良くなるからだ。

 いったん植民地から独立した世界中の新興の国民国家群が、再びどこかの大国に征服されて植民地に戻らないよう、国家が他の国家を軍事占領したり植民地支配することを禁止する世界的な規範(国際法)が作られた。すべての国家が対等であるとの建前が作られた。世界帝国は世界市場になり、帝国は覇権国に変質した。帝国は、時代遅れな歴史的遺物になった。大英帝国は、英国自身を富ますための仕組みから、できるだけ効率的に世界市場の安定を守るための機能に変わった。これらはすべて、資本の論理に基づいていた。 (資本の論理と帝国の論理)

▼世界帝国を起案したのも、帝国を市場に変えたがるのもユダヤ資本家

 近代以前の欧州において、資本家のほとんどがユダヤ人だった。スペインやポルトガルの王室に資金提供し、地理上の発見や世界帝国の戦略を作ったのもユダヤ資本家たちだ。古来、地中海周辺の全域に住んでいたユダヤ人は、中東イスラム世界と欧州キリスト教世界の両方に通じており(イスラム世界は、一神教の先輩としてユダヤ教徒を受容してきた)、イスラム世界が持っていた高度な航海技術や地図類をスペインとポルトガルに伝授し、資金と技術の両面で地理上の発見を推進にした。世界帝国は、ユダヤ資本家の創造物だった。 (覇権の起源:ユダヤ・ネットワーク)

 その後、ユダヤ資本家たちは、ユダヤ人迫害を強めるスペインを見捨て、スペインから独立したオランダに移り、世界覇権の主導役もオランダに移った。さらにその後、英国がユダヤ資本家を厚遇したため、資本家と覇権の両方が英国に移り、産業革命が実現された。ユダヤ資本家は、世界帝国の発案者だっただけでなく、その後、今に至る世界帝国・世界覇権の運営を手がけ、スペインからオランダ、オランダから英国、英国から米国へと「覇権ころがし」をやってきた。米国でも英国でもロシアでも、覇権をめぐる運営や発案、描写を手がける高官や外交官、学者、歴史家、記者には、ユダヤ人が多い。世界帝国・覇権の黒幕的な運営は、ユダヤ人の天職である。(覇権運営をユダヤ人に依存していないのは、生来の地域覇権国である中国だけだ。その中国でさえ、キッシンジャーが訪中すると大歓迎して教えを請う)

 世界の帝国・覇権体制の近代化をうながした要素として、産業革命と並ぶもうひとつが、フランス革命に始まる「国民革命」だ。王制を倒し、主権在民の共和制を敷いたことで、王侯貴族に労働や納税、兵役を強制されて嫌々ながら働いていた農奴や臣民は、国民革命を経て「国家の主人」とおだてられて俄然やる気になり、喜んで労働、納税、兵役をこなす「国民」に変身した。ナポレオン率いるフランス国民軍はすすんで戦い、他の諸国のやる気のない傭兵軍よりはるかに強かった。

 産業革命がモノ(機械)の効率化だったのと対照的に、国民革命(フランス革命)は人々(社会)の効率化だった。国民国家は、封建国家より、はるかに効率的だった。英国をはじめとする王政の諸国は、これを見て、王政を維持しつつ、国民に部分的に主権を与えてやる気を出させる立憲君主制(擬似的な国民国家体制)に移行していった。

 ユダヤ人はここでも、フランス革命の黒幕的な推進役として登場する。資本家(=ユダヤ人)にとって、社会を効率化する国民革命と、機械を効率化する産業革命は、自分たちの投資の儲けを増やす策だった。投資家たちは、投資の利益を増やすため、2つの革命を、英仏だけにとどまらせず、全世界に拡大することを画策した。覇権国だった英国は、欧州征服を狙ったナポレオンを何とか退治した後、1815年にウィーンに欧州諸国を集め、まだ国家としてまとまっていなかったドイツとイタリアを、国民国家としてまとめていくことを決定した。 (国家と戦争、軍産イスラエル)

 ドイツとイタリアは、住民がドイツ人やイタリア人としての意識を高めて国民国家を創設するより先に前に、英国によって、あらかじめ国民国家になることが決められていた。覇権や国際体制は自然・偶然に形成されているかのように見えて、偶然や理想主義の発露に見せかけること(歴史家や記者による正史の形成)も含めて、黒幕的な設計者がいると感じられる。黒幕がいると指摘する者を陰謀論者・ユダヤ人差別主義者として社会的に抹殺する装置も用意されている。

▼しぶとく黒幕化して覇権を維持した英国

 その後150年ほどかけて、世界的に植民地の独立運動が進み、世界中が国民国家で埋め尽くされていった。この動きが興味深い点は、英国自身が、世界覇権(大英帝国)の永遠の存続を望む一方で、自らの世界体制を解体消滅させる植民地の相次ぐ独立を容認したことだ。英国は、旧来の王国勢力(アングロサクソン)が、世界覇権の運営勢力(ユダヤ資本家)を招き入れて合体することで、覇権国である大英帝国になった。だが、産業革命によって英国の覇権力が強まると同時に、世界中に産業革命を広めようとする資本家の欲求が強くなり、帝国の永久繁栄を望むアングロサクソン的な要素より、世界経済全体の繁栄を望むユダヤ的・資本家的な要素が優先されるようになった。「帝国と資本の相克」が大きくなった。 (多極化の本質を考える)

 英国の上層部で、英国自身の強さの維持を望む勢力が、英国より世界の発展で儲けたい資本家勢力と談合して決めたことは、植民地の独立を容認し、世界中を国民国家で埋め尽くす転換をやっても良いが、作られる一つずつの国民国家をできるだけ大きくせず、英国よりもはるかに大きい国民国家を作らないようにすることだった。 (大均衡に向かう世界)

 英国より大きな国民国家がたくさん作られると、それらの諸国はいずれ英国より大きな経済力・国力を持つにいたり、相対的に英国の力が弱まってしまう。英国と同じくらいの大きさの国民国家が世界中を埋め尽くす状態なら、英国は外交技能を駆使して、それらの国々の主導役をやっていられる。英国は、ナポレオンがスペインを征服し、南米大陸でスペインの植民地が独立する際、バラバラの小さな諸国として独立するように扇動した(ポルトガル領だったブラジルだけは手を出せず、大国になった)。英国はまた、中近東(サイクスピコ条約)やアフリカ、中国の分割も画策している。中国の分割は、米国の妨害で実現しなかった。 (アフリカの統合)

 英国から欧州大陸に産業革命が広がった結果、ものづくりがおたく的にうまいドイツが、英国をしのぐ経済力を持つようになった。産業革命のアジアへの拡大は、日本の台頭を生じさせた。経済的に劣勢になった英国は、政治や軍事で、ドイツなどの新興大国に対抗し、この過程で2度の世界大戦が起きた。資本家の側から見ると、2度の大戦は、英国とドイツ(独日)を戦わせて相互に破滅させ、残りの世界の諸国(世界中の植民地)を支配から解放し、戦後の世界的な経済発展を引き起こそうとする動きだ。 (真珠湾攻撃から始まる覇権分析)

 大戦によって大英帝国が消滅し、代わりに国際機関(国際連盟や国際連合)が世界を運営する機能を引き継ぐ「覇権の機関化」「覇権の超国家化」が、大戦によって画策された。世界の支配権(覇権・帝国)を一つの国が握っている限り、その国が世界から収奪する傾向が続き、世界の発展が阻害される。英国とドイツなどが覇権を奪い合って大戦争になる可能性も続く。だが、国際機関を作って覇権(世界運営)を委ねる「覇権の機関化」をすれば、世界の発展を極大化できるし、戦争の発生も国際機関の調停・裁定によって防げる。世界の市場化、世界中を国民国家で埋め尽くす植民地の独立、覇権の機関化(国際連盟などの創設)という3つの現象は、表裏一体のものだった。

 この3つの現象を鼓舞・主導する役割を演じたのが、20世紀初頭の米国だった。英国(ロンドン)から米国(ニューヨーク)に資本家の中心地が移動する事態が、19世紀末から起きていた。それまで、世界の支配権の争奪戦は、欧州などユーラシア大陸で起きていたが、米国は、ユーラシアから遠く離れた孤立的な米州大陸にあった。米国は、世界の新興大国の一つだったが、地理的な理由から、諸大国間の覇権争いに参加せず、超然としていた(モンロー宣言や、中国に関する門戸開放宣言など)。米国は、世界大戦によって英国など欧州の諸大国が相互に自滅した後、覇権の機関化を主導する役割としてうってつけだった。 (世界のデザインをめぐる200年の暗闘)

 だが、国際的な策略の技能としては、米国より英国の方が上だった。米国は、英国の側に立って途中から第一次大戦に参戦し、参戦の見返りに、戦後の世界体制を構築する主導権を英国に譲渡させ、国際連盟を作った。だが、英国は国際連盟の運営に協力せず、ドイツや日本の覇権拡大を止められなくなり、第2次大戦が起きた。米国は再び、戦後の世界体制を構築することを条件に、英国の側に立って参戦し、日独を倒し、戦後の覇権の機関化策として国際連合を作った。だが、国際連合の体制も、発足から2年後に、英国によって米ソ対立の冷戦構造を構築され、機能不全に陥った。 (ヤルタ体制の復活)

 国際連合(と国際連盟)は、諸大国の談合によって戦争を抑止する安全保障理事会(常任理事国)の「覇権の多極化」の体制と、一カ国一票ずつの投票で世界を運営していく総会の「覇権の民主化」を組み合わせて機能させていた。世界の安定を維持するには、安保理常任理事国の5か国(P5)が相互に対立せず、仲良くすることが必要だった。英国はこの点を突き、終戦から2年後の1947年にチャーチル首相が訪米して発したロシア敵視の鉄のカーテン演説を皮切りに、米国とソ連の敵対を扇動し、P5が米英仏と中ソで対立して分裂するよう仕向け、国連による世界運営を機能不全に陥らせた。英国(帝国維持派)の策略により、米国(資本家)が画策した覇権の機関化は頓挫した。 (隠れ多極主義の歴史)

 同時に英国は、米国の政権内や政界、言論界で、ソ連や共産主義(中ソ)を敵視する勢力が権限を握るように誘導した。第2次大戦中、英国は、戦争に勝てるようにするという口実で、米英の軍事諜報やプロパガンダの部門を連携・統合したが、戦後、英国はこの機能を使って米国の軍事諜報・プロパガンダ部門に入り込んで隠然と牛耳り、ソ連敵視、国連の機能不全、ソ連と敵対するNATOを作って国連でなく米国・米英同盟が世界戦略を決定する米国(米英)覇権体制の構築などを推進し、米国の戦略決定機構を英国好みに改造してしまった。 (覇権の起源:ロシアと英米)

 英国に隠然と牛耳られた米国の軍事諜報・プロパガンダ部門が「軍産複合体」である。CIA、国防総省、国務省、各種シンクタンク、マスコミ、学界などが含まれている。米国の諜報機関であるCIAは戦時中、英国(MI6)からの技術指導によって創設されており、最初から英国(のスパイ)に入り込まれている。

 ニューヨークの国連本部は、当時の最有力資本家だったロックフェラー家が寄贈した土地に作られた(ロックフェラー家自身は非ユダヤだが、その周辺はユダヤ人に満ちている)。米国の資本家が、覇権の機関化(英国覇権の解体)を推進したことが見て取れる。しかし、米国の世界戦略を練るためのシンクタンクとしてロックフェラーが戦時中に作ったCFR(外交問題評議会)は、創設時から、英国の戦略立案機関である王立国際問題研究所(チャタムハウス)の姉妹機関として作られており、CIAと同様、最初から英国に入り込まれている。

▼冷戦終結で資本側が勝ったが911で帝国側がクーデター的返り咲き

 英国は、第2次世界大戦に参戦してくれた米国に対し、旧覇権国として、覇権運営を教えてあげると言いつつ、米国の戦略部門を隠然と乗っ取ってしまった。米国は、覇権を英国から引き剥がして国連に移転する覇権の機関化をやりたかったのに、冷戦勃発、軍産複合体による隠然クーデターによって、米国自身が国連無視、左翼敵視(=途上国敵視)の好戦的な覇権国として振る舞うという「ミイラ取りがミイラになる」事態になった。

 それ以来、米国は、英国や軍産複合体に牛耳られてソ連を敵視する状態から脱する「冷戦終結」を実現するまでに、40年以上もかかっている。軍産との暗闘の末、ケネディが殺され、ニクソンは辞めさせられた。ソ連の経済運営が失敗し、80年代のアフガニスタン占領でソ連がさらに疲弊し、親欧米的なゴルバチョフが権力を持ったことを突いて、レーガンが89年に米ソ和解を果たした。ソ連は崩壊し、米国は、ドイツ(英国の仇敵)を英国好みの「東西恒久分割の刑」から救い出して東西統合させ、EU統合を始めさせた。 (ニクソン、レーガン、そしてトランプ)

 レーガン政権は巧妙だった。軍産の黒幕だった英国に対し、米英が共同で金融財政面から世界を支配する「金融覇権体制」(債券金融システムの運営権。投機筋を使って他の諸国を財政破綻させられる「金融兵器」)を与えて懐柔し、英国を軍産から引きはがした上で、軍産英国が維持していたソ連敵視の冷戦構造を崩した。 (金融覇権をめぐる攻防)

 英国は、旧覇権国として19世紀から国際政治(外交)のシステムを作って維持してきただけに、冷戦下の世界戦略を運営する米国の軍産の黒幕として高い技能を持っていた。英国に去られた軍産は力を失った。冷戦後に米政権をとったビル・クリントンは、英国のブレア政権と組み、G7諸国をしたがえて経済主導の世界運営を行う一方、米国の軍事産業を縮小し、合理化・統廃合を進めた。覇権が経済主導になり、軍事主導だった「歴史の終わり」が語られた。帝国と資本の暗闘は、冷戦終結とともに、資本が大幅に強くなった。

 窮乏していた軍産を救ったのは、以前から米政界に影響力を持っていたイスラエル右派勢力だった。彼らは、米国が半永久的にイスラエルを守る体制を作ることを目的に、中東のイスラム諸勢力(アルカイダ、ハマス、ヒズボラ、イラン、サダムフセインのイラク、タリバンなど)の米国敵視を扇動し、米国が、中東イスラム過激派との間で、米ソ冷戦に代わる恒久対立(第2冷戦)を行う状態を作ろうと画策した。策略の皮切りは90年の湾岸戦争だったが、米側が慎重でイラクに侵攻しなかった。

 米国はイスラエルに、パレスチナ・アラブ側と和解させる中東和平を押しつけ、イスラエルの左派はそれに乗ってラビン首相が95年にオスロ合意を締結した。だが、イスラエル右派は97年にラビンを暗殺して中東和平を壊し、同時に米国の軍産と組んで、イスラム過激派にテロリストのレッテルを貼り、イスラム世界との第2冷戦の対立構造を作っていった。軍産イスラエルの圧力を受け、クリントン政権は98年ごろからイスラム敵視の姿勢を強めた。

 イスラムとの第2冷戦(テロ戦争)の構造が劇的に立ち上がったのが、米政府が共和党ブッシュ政権に交代して間もなく起きた、01年の911テロ事件だった。米当局(軍産)の自作自演性が感じられる911は、軍産イスラエルによる米国の乗っ取り、クーデターだったと言える。米政府の戦略は、アフガニスタンやイラク、イランなどに対する敵視が席巻し、中東以外との関係が軽視され「911後、米国は中東の国になった」とまで言われた。米軍を自国の「衛兵」にするイスラエル右派の策略は、911によって見事に結実した。軍産が、米政権の中枢に返り咲いた。帝国と資本の相克において、資本側がまさっていた時代は、冷戦終結から11年しか続かなかった。

▼隠れ多極主義でないと軍産支配に勝てない

 911後、軍産イスラエル(=帝国)の恒久支配が続くと思われたが、何年かたつうちに、事態はそうならず、奇妙な展開をするようになった。911後、米国は、アフガンとイラクに侵攻して占領を開始し、中東を軍事で政権転覆して強制民主化(恒久占領、傀儡化)を進める戦略を打ち出した。だが、これらの戦略を立案したブッシュ政権中枢のネオコン(多くがユダヤ人)は、恒久占領や傀儡化に必要な、緻密な安定化戦略を初めから立てず、しかもイラク侵攻時の開戦事由として使ったイラクの大量破壊兵器保有が捏造したウソ(濡れ衣)であり、それが侵攻前からバレていた。

 これらは、戦略立案者としてあまりに稚拙であり、少なくとも未必の故意である。似たような稚拙な過激策を中東各国で次々と繰り返したことからみて、うっかりミスでなく、意図的なものと考えられる。どうやらネオコンは、わざと稚拙で過激な戦略を大胆に実行し、米国の中東支配戦略を失敗に至らせることで、軍産イスラエルの戦略を破綻させる役割を担ったようだ。ネオコンの多くは、イスラエル右派を標榜するユダヤ人だが、同時にロックフェラー家が運営費を出してきた国際戦略立案のシンクタンクCFR(外交問題評議会)のメンバーでもある。

 ネオコンは表向き軍産イスラエル(帝国)の一味のようなふりをして軍産に入り込んで戦略立案を任されたが、実は資本家が送り込んだスパイで、稚拙な策を過激に展開し、軍産の策をわざと失敗させ、米国の覇権を意図的に低下させたと考えられる。私は彼らのような存在を、単独覇権主義者(帝国側)のふりをして単独覇権を壊し、覇権の多極化(機関化)へと誘導しようとする勢力(資本側)と考えて「隠れ多極主義者」と呼んでいる。(ネオコンは一枚岩でなく、本当に軍産の一味だった人もいただろうが、スパイの世界=軍産内部は本当とウソの見分けがつかないので分析は困難だ) (ネオコンの表と裏)

 ネオコン(資本家の側)が、隠れ多極主義などという手の込んだ策略をとる必要があった理由は、911によって軍産イスラエルが構築した新体制が、軍産の「戦争プロパガンダ」の機能を活用した強固なもので、正攻法で壊せなかったからだ。戦争プロパガンダは、戦時にマスコミ・言論界・政界・諜報界などが国家総動員で、敵国=悪・自国=善の構図を作って全国民を信じこませる(信じない者を弾圧する)機能で、第2次大戦で世界的に確立された。軍産英国は、この機能を使ってソ連敵視の冷戦構造を確立し、当時の覇権の多極化体制(米ソ協調。ヤルタ体制)を潰している。 (歴史を繰り返させる人々)

 戦争プロパガンダは、いったん発動されると、それに逆らうことや沈静化させることが非常に難しい。マスコミが911の自作自演性を全く報じないのは、それが戦争プロパガンダの範疇だからだ。911のアルカイダ犯人説や、イラクの大量破壊兵器、イランの核兵器開発は、いずれも米国の諜報界がでっち上げた自作自演・濡れ衣なのだが、戦争プロパガンダなのでウソが露呈しない。米政府は、イラクの占領に失敗した後、侵攻前のイラクに大量破壊が存在していなかったことを静かに認めた。だが、911と、イランの核開発については、今でもウソが「事実」としてまかり通っている。IAEAは、イランが核兵器開発していないことを静かに認めたが、米国のマスコミはその後も、イランが核開発していると喧伝し続けた。軍産プロパガンダのウソを指摘する人々は「頭のおかしな人」「左翼」「陰謀論者」「売国奴」などのレッテルを貼られ、社会的に抹殺される。資本家側は、軍産がでっち上げたウソを受け入れざるを得なかった。 (ネオコンと多極化の本質)

 911後のイスラム敵視の戦争プロパガンダの体制下において、ウソをウソと言うのは困難だが、イスラム敵視の稚拙な濡れ衣を粗製濫造することは許され、むしろ奨励された。ネオコンはこの線に沿って、あとでバレやすい稚拙な濡れ衣や、米国では受け入れられるが欧州など他の同盟諸国の同意を得られない過激な濡れ衣をどんどん作った。 (CIAの反乱)

 イラク侵攻後、大量破壊兵器の開戦事由がウソだったことが露呈し、イラク占領も失敗が確定したことにより、米国の国際信用(覇権)は大幅に低下した。戦争プロパガンダを使った軍産の独裁体制を壊すには、プロパガンダのウソを指摘するやり方ではダメで、プロパガンダに乗って稚拙なウソに基づく過激な戦略をどんどんやって失敗させるネオコンやトランプのやり方が、おそらく唯一の対抗策だ。だから、ネオコンやトランプは、稚拙で過激な路線をとっている。

▼トランプのネオコン戦略

 冷戦後、クリントン政権の時代は資本の側が勝っていたが、ブッシュ(W)政権になって911で帝国の側が盛り返した。しかし、それもネオコンの隠れ多極主義戦略によって自滅させられた。冷戦後、米国が英国を誘って作っていた金融覇権体制(債券金融システム)も、ブッシュ政権末に起きたリーマン危機で壊れた。債券金融システムは、中央銀行群によるQE(資金注入)によって表向き延命・バブル膨張しているが、いずれQE(や金融規制緩和などの延命策)が終わるとバブルが崩壊して潰れる。金融覇権も、すでに潜在的に死んでいる。 (さよなら先進国) (やがて破綻するドル)

 オバマ政権は、イラクから米軍を撤退し、イランと核協定を結んで核の濡れ衣を解いた。これらの策は、ブッシュ前政権下でネオコンが失墜させた米国の国際信用の回復を狙うもので、それを見ると、オバマは米国の世界覇権を維持回復しようとしたと感じられる。だが同時にオバマは、シリア内戦の解決をロシアに頼み、中東を、米国の覇権下から露イランの覇権下に押しやるという、覇権の多極化も手がけている。 (軍産複合体と闘うオバマ)

 そして今のトランプ政権になって、米国は再び、帝国と資本の相克が激化している。トランプは、選挙戦段階から、世界に覇権を行使しようとする米国のエスタブリッシュメント(=軍産)と対立し、軍産の一部であるマスコミに敵視され続けている。帝国と資本の相克、米国覇権を維持しようとする勢力と、米覇権の自滅や放棄、多極化を画策する勢力との対立構造の中で、トランプは資本や多極化の側にいる。トランプは当初、ネオコンを覇権主義勢力とみなして敵視していたが、大統領に就任し、ロシアと和解する正攻法の戦略を軍産に阻止された後、正攻法よりも隠れ多極主義の方が良いと気づいたらしく、ネオコンの戦略を採り入れた。 (トランプ革命の檄文としての就任演説)

 トランプは北朝鮮に対して今にも先制攻撃しそうなツイートを発信したり、イランとの核協定を離脱して経済制裁を強めそうなことを言ったりして、これ以上ないぐらい好戦的な姿勢をとっている。政権内の軍産系の側近たちは、北との戦争にも、イラン核協定からの離脱にも反対しており、トランプは軍産がいやがる過激策を稚拙にやりたがるネオコン策をやっている。実際のところ、米国が北を先制攻撃すると、北からの報復で韓国が壊滅するので、米国が北を先制攻撃することはない。イランへの制裁も、トランプは自分でやらず米議会に決めさせようとしており、米議会は制裁に乗り気でないので実現しない。トランプは、過激なことを言っているだけだ。 (軍産複合体と正攻法で戦うのをやめたトランプのシリア攻撃)

 トランプが過激で稚拙なことを言うだけの戦略をとり続けると、国際社会で米国への信用が低下し、対照的に、現実的な国際戦略をやっているロシアや中国への信用が高まる。北もイランも、露中の傘下で問題解決されていく道筋が見え始めている。米国の信用が低下し、露中の信用が上がるほど、安保理常任理事会での露中の主導権が強まり、世界を安定させる国連の機能が復活する。一見無茶苦茶なトランプの言動は、覇権の多極化と機関化を推進している。 (多極型世界の始まり)

 トランプは最近、国連機関であるユネスコからの脱退を決めたが、こうした国連敵視策も、国連を弱めるのでなく、逆に、米国抜きの国連が世界を運営し、米国は孤立して弱体化することにつながる。ロシアも中国も、米国の軍産に比べると、安定した世界を好む傾向がはるかに強い。露中が台頭すると世界が悪化すると思っている人は、軍産のプロパガンダを軽信してしまっている。

 トランプが20年の選挙で負けて1期4年で終わり、次に民主党の巧妙な大統領が出てくると、トランプの覇権放棄策が無効にされ、米国覇権の再建が試みられるだろう。だがトランプが2期8年続くと、その間に露中主導の多極型覇権が定着し、米国から自立して国家統合するEUもそこに加わり、その後の米国の覇権回復が難しくなる。

 19世紀末以来、人類は百年以上、帝国と資本の相克・暗闘に翻弄されてきた。19世紀末に、大英帝国の運営者が、帝国の解体と市場化に全面賛成していたら、百年以上前に「歴史の終わり」が実現していただろうが、実際の歴史はそうならず、人類の近代史は丸ごと相克になっている。トランプが、この相克を終わりにできるのかどうか、まだわからない。

トランプ訪日で浮き彫りになった「アメリカファースト」の真実

DIAMOND online

2017.11.8より転載

トランプ訪日で浮き彫りになった「アメリカファースト」の真実

上久保誠人:立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長 
トランプ訪日

Photo:首相官邸HPより

 ドナルド・トランプ米大統領が11月5日に初来日した。ゴルフ、銀座、4度の食事会と、まるで「成金の社長さんを接待する」かのようにご機嫌を取り、ことさらに「今ほど日米関係が緊密なことはなかった」を強調した。しかし、具体的に何か進展したかといえば、何もない。

 この連載ではトランプ大統領の「アメリカ第一主義(アメリカファースト)は変わっていないと指摘した。結局、米国は北朝鮮が米軍グアム基地や米国本土を直接攻撃できるミサイルを開発する可能性が出てきた時に、初めて北朝鮮問題に介入してきたからである(本連載第155回)。

 今回の訪日でも、大統領はひたすらアメリカファーストであった。安倍首相は、大統領が機嫌を損ねて「日本を捨てる」と言い出さないように、ひたすら歓待するしかなかったように見える。

 この連載では、日本がなぜ「奇跡」と呼ばれた高度経済成長を成し遂げて、経済大国となれたかを振り返ってきた(第149回)。それは、東西冷戦期の米国の戦略に日本が組み込まれ、「米国に守ってもらい、米国に食わせてもらった」からに他ならない。今回は、これまで断片的に何度か論じてきた「米国の戦略」を整理し、メディアが「シンゾー・ドナルド関係」とひたすら持ち上げる日米関係の「本質」を考えてみたい。
米国の戦略(1):
米国が世界の警察官になり「世界を食わせた」理由

 日本が高度経済成長を成し遂げたのは、端的にいえば、米国が日米安保条約に基づいて日本の安全保障を肩代わりし、日本の製品をどんどん購入してくれたからだった。「軽武装経済至上主義」の「吉田ドクトリン」を打ち出した吉田茂元首相は、これについて「日本は米国を番犬として飼っていると思えばいい」とまで言った。日本がしたたかに米国を利用して、先進国にのし上がったといえる。
しかし、日本は先進国になりながらも、米国にどんどん輸出をする一方で、市場を保護して米国からの輸入をブロックし続けた。これが、米国の不満となり、70-80年代には、日本は上記のトランプ氏のような発言を、米国から散々聞かされた来た歴史がある。これは日本だけの話ではない。東西冷戦期から今日に至るまで、世界中の新興国が、米国に製品を買ってもらって成長しているし、米国に守ってもらっている(第150回)。

 米国は、なぜ「世界を食わせてやってきた」のか。なぜ「世界の警察官」を務めてきたのか。今日では、それは当たり前のこととなっているので、皆忘れているようだが、そもそもは東西冷戦になり、ソ連・中国共産党の共産主義ブロックに対抗するための米国の戦略であった。

 第二次大戦後、ソ連の台頭、中華人民共和国の成立による共産主義の拡大を防ぐために、米国は地政学的な拠点にある国々と同盟関係を築こうとした。例えば、西ドイツ、フランスなど西欧、日本、韓国、トルコなどアジアが共産主義と対峙するフロントラインであり、戦略的拠点であった。まず米国は、これらの国々を同盟国とするために、「ソ連の侵略から守る」という約束をする必要があった。

 第二次大戦で荒廃した国々は、自ら国を守る軍事力を失っていた。また、米国から巨額の援助を受けることなしに、経済復興することもできなかった。ソ連からの独立を維持するには、米国から軍事的、経済的に守ってもらうことしか方法がなかった。

 こうして、米国は世界各地に米軍を展開し、同盟国の領土をソ連の軍事的脅威から防衛する「世界の警察官」になったのである。米軍は同盟国の安全保障をほぼ肩代わりし、同盟国で無制限に軍事作戦を展開する自由を得た。例えば、朝鮮戦争やベトナム戦争では、同盟国の領土内でありながら、米軍が主力となり、同盟国を従える形で、共産主義と直接戦った。

 ただ、「世界の警察官」は、同盟国を守るだけではなかった。次に米国は、米国自身と同盟国が安全に石油・ガスなど天然資源を確保するため、世界的に展開できる唯一の海軍を提供して「世界の全ての海上交通路」を防衛した。それまで同盟国は、国家の軍事力のかなりの部分を、特に公海上での商人とその貨物の護衛に割く必要があった。米国が「世界の警察官」となることで、同盟国、自国の沿岸線をパトロールする小規模な海軍を維持するだけでよくなった。

 さらに米国は同盟国に、「米国市場への自由なアクセス」を許した。第二次世界大戦で世界中の市場が荒廃した後、米国市場は世界で唯一、ある程度の規模を持ち、各国がアクセスを求めるに値する市場となっていた。米国は、同盟国を自らの貿易システムに招き、工業化と経済成長を促した。その目的は、同盟国を豊かにすることで、同盟国の国内に貧困や格差による不満が爆発し、共産主義が蔓延することを防ぐことだった。これが米国が「世界の国を食わせてやった」理由である。


米国の戦略(2):
なぜ日本と西独が「奇跡」の高度成長を成し遂げたのか

 最初に米国が接近したのが、かつての敵国だった日本と西ドイツであった。第二次世界大戦後、米国は当初、日本と西ドイツが二度と軍事大国化することを防ぐために、再工業化は行わない方針だった。その方針が変わったのは、1950年の朝鮮戦争の勃発であった。日本は、自由主義圏と共産圏によって南北に分断された朝鮮半島に近接し、アジアにおいて共産主義ブロックと対峙する前線となった。

 一方、ドイツは自由主義圏と共産圏に分断されて、西ドイツはより直接的に共産主義ブロックと向き合う最前線となった。米国は、両国を再度工業化して防衛力を強化することに方針を転換した。そして、日本とドイツは「奇跡的な高度経済成長」を成し遂げて、共産主義に対抗するフロントラインとして機能したのである。

 そもそも、両国が第二次世界大戦を始めた最大の理由は、資源と市場へのアクセスを確保するためだった。どちらも第二次世界大戦で完膚なきまでに叩きのめされたが、戦後の「戦勝国」の米国から、元々の望みをはるかに上回るものを提供された。その上、米国から自力では到達しえない完璧な安全保障を提供されたのである。これを「奇跡」と呼ばずに、他に奇跡と呼べるものがあるだろうか。
米国の戦略(3):
米国の同盟国同士の歴史的な紛争が回避できた

 米国市場への自由なアクセスは、日本、ドイツだけではなく、韓国、台湾、オセアニアの諸国、北米大陸、西ヨーロッパ、そして後には共産主義の大国である中国までもが参加した。ピーター・ゼイハンは、多くの国が米国の同盟国になることで得たメリットを以下の通り整理している。

1.フランスとドイツは、お互いに相手を警戒して武装する必要がなくなった。

2.スウェーデンやオランダなどの中規模の国家は、貿易に焦点をあてて自国の強みを活かすことに集中できるようになり、防衛には最小限の努力を割くだけでよくなった。

3.世界中の貿易路の安全が保障されたことで、さまざまな土地を占領する必要がなくなった。最古の小麦生産地であるエジプトは、過去2000年で初めて、自由に息をつけるようになった。

4.世界中に散らばるヨーロッパの植民地が解放された。東南アジア諸国連合(ASEAN)を設立し、独自の自由貿易ネットワークを形成した。

5.日本はもはや東アジア沿岸地域を搾取する必要がなくなった。アメリカの安全保障下で、韓国、台湾、シンガポールの3国が世界で最もダイナミックな経済国として台頭した。中国はその歴史上で初めて、外部の干渉のない安全な環境で国の基盤を固めることができた(ゼイハン,2016:135-7)。

 つまり、米国が築いた同盟体制とは、単に米国が同盟国を共産主義から守ったというだけではない。より重要なことは、それぞれの国が、領土の安全の確保、資源の確保、市場の確保のために、長年の歴史において「敵」となっていた隣国を警戒する必要がなくなったということだ。それらを全て、米国がやってくれたからである。


あらためて、
アメリカファーストとは何かを考える

 ここで、トランプ大統領のアメリカファーストとは何かを、あらためて考えてみたい。大統領はご存じの通り、過激な発言を繰り返してきた。例えば、同盟国・日本に対しては、

「日本から、何百万台もの車が、ひっきりなしに輸入されてくる。アメリカは、日本に何か買わせたか? 牛肉を輸出した、だが日本は買いたがらない。これは貿易不均衡だ」

「(もし中国などが日本を攻撃したらどうするかという質問に)アメリカが一歩引いても、日本は自ら防衛できるだろう。 日本は中国との戦争に勝ち続けた歴史がある。なぜ、アメリカは日本を守ってやっているのか?ご存じの通り、日米安保条約は心憎い。なぜなら、他国がアメリカを攻撃しても、日本はアメリカを助けなくてよい。なのに、他国が日本を攻撃したら、アメリカは日本を助けなければならない」

 といった調子である。

 一見荒唐無稽に聞こえるが、事の本質を突いている。大統領は、米国が「世界の警察官」を続ける意思がなく、「世界を食わせる」ことをやめると明快に言っている。これから米国は、米国自身のために軍隊とカネを使う。むしろ同盟国は、米国のために少なくともカネを出せ。これがアメリカファーストなのである。

 ここで、日本社会に広がる1つの「誤解」を解いておきたい。それは、トランプ大統領がアメリカファーストを唱えるのは、米国が弱体化したからだという誤解だ。むしろ実態は逆で、米国は「史上最強」と呼んでもいい状態だ。

 米国のアメリカファーストは、トランプ大統領の個人的な思いつきではない。前任のバラク・オバマ大統領の時代から進められてきた、米国の国家戦略の変化と見なすべきものなのである。オバマ前大統領は、2013年9月に対シリア内戦への軍事不介入声明を発表した際、「もはやアメリカは世界の警察官ではない」と宣言し、中東からの米軍撤退、将来の韓国からの米軍撤退(公表)、2020年から2026年の間に沖縄から海兵隊を含む全米軍撤退(非公式)、NATO(北大西洋条約機構)の閉鎖又は欧州中央軍への統合、中南米、アフリカ地域からの米軍撤退等々を打ち出してきた。「世界の警察官を少しずつやめていく」のは、米国内で党派を超えたコンセンサスなのだ(第145回)。

 その背景には「シェール革命」があると考える。主に米国で生産されるシェール石油・ガスによって、米国が石油の輸入国から輸出国に変わる劇的な変化が起こった。エネルギー自給を達成し、米国内で「ものづくり」が復活し、新たな雇用が生まれた。しかし、その結果として、米国は独りでやっていけるということになった。「世界の警察官」として、産油国が多数ある中東など国際社会に関わっていく必要性がなくなったのである。これが、アメリカファーストの背景にある。

トランプ訪日は「大統領を接待した」だけに終わった
日本は引き続き「超対米従属」に徹するしかない

 今回の訪日で、トランプ大統領は「どんな独裁者も、どんな政権も、どんな国も米国の決意を甘く見ないほうがよい」「私が大統領である限り、米国は圧倒的な力と資金で必ず勝利する」と発言し、北朝鮮への圧力を一段と強化する方針を示した。それは大変心強いことだが、発言の内容は、従来以上に踏み込んだものではない。

 むしろ驚かされたのは、トランプ大統領が「日本が米国からさらに軍装備品を購入すれば、安倍首相は北朝鮮のミサイルを撃ち落とすことができるだろう」と発言したことだ。安倍首相は「日本の防衛力を質的に、量的に拡充していかなければならない」と応じ、イージス艦などのミサイル防衛体制強化のために、米国からさらに装備品を購入していくことになるとの見通しを示した。

 また、トランプ大統領は、日米の企業経営者らとの会合で、日本との貿易は「公平で開かれたものではない」と強調し、「日本との慢性的な貿易不均衡を是正していかなければならない」と発言するなど、貿易赤字解消への意欲を示している。

 結局、「過去にない緊密な日米関係」をいくら強調してみたところで、トランプ大統領は「アメリカから武器を買って、日本に飛んでくるミサイルは自分で撃ち落とせ」なのである。何度でも強調するが、アメリカファーストなのである。

 今、日本ができることは「超対米従属」のみである(第149回)。米国が築いた同盟関係から最も恩恵を受けてきた日本は、同盟関係を維持する以外に、生きていく道はない。その意味で、安倍首相がトランプ大統領をまるで「成金社長を接待漬け」にするように歓待したのは、正しいと思う。

 気がついたら、米国は中国とうまく「ディール」して、米国に北朝鮮からミサイルが飛んでこないことだけを決めて、「あとはシンゾー、うまくやれ。武器は売ってやる」と言って去っていく。日本は「東洋の一小国」として孤立してしまうという、最悪の事態を想定しておくべきではないだろうか。

参考文献 :ピーター・ゼイハン(2016)『地政学で読む世界覇権2030』(東洋経済新報社)

(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)


10/29のツイートまとめ

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10-29 17:51

10/18のツイートまとめ

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https://t.co/3ElX3zz3AJ
10-18 21:11

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