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プエルト・リコに見るニューオーリンズとハイチへの道 (海坊主)

プエルト・リコ(海坊主さんのコメント)
2018-03-12 22:04:32 | 日記・エッセイ・コラム
 プエルト・リコの復興の現状に関連して、海坊主さんから重要なコメントを戴きました。ただ投稿の場所が2012年4月11日付のブログ『神妙な顔で謝る男(3)』ですので、皆さんに読んでいただく為に、ここに転載します:
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プエルト・リコに見るニューオーリンズとハイチへの道 (海坊主)
2018-03-11 16:33:23
 2017年9月にハリケーン「マリア」の直撃を受けたプエルト・リコの復興は依然として進んでいません。住民が米国民であるのに関わらず、その米国の健康基準を満たし得ない不衛生な水での生活を強いさせられています。これは、あたかも大地震を被災したハイチの姿と重なります。被災後のハイチがどう扱われてきたのか、この『私の闇の奥』の過去の記事群から私たちは知り得ます。

 被災後のハイチは国際的な援助を受けるもそのほとんどが現地住民の手に渡る事はなく、現地の復興もなおざりに、長きに渡り粗末なキャンプで不衛生な生活を強いられました(性暴力、人身売買なども発生)。そしてコレラの蔓延を許し、多く人々が病に倒れ亡くなりました。今でも復興の兆しが見えていません。圧政を敷いたかつての独裁者はしれっと帰国し、米国の息のかかった支配者がハイチの将来を握るという有様です。米国の強い干渉下にあるとはいえ、仮にも主権を持った独立国家ハイチに起きていることであり、ハイチの人々がハイチの為に立ち上がるのを私は強く願うのみです。

 しかし、プエルト・リコは米国自治領で米国政府が責任を持って事態収拾に努めなければなりません。しかし、このプエルト・リコといい、ハリケーン「カトリーナ」で被災したニューオーリンズといい、災害発生当初の事態収拾へのアクションは緩慢で決して満足いくものではないと思われます。この二つの地域に共通するのは、被災前の経済活動は停滞期に入っていた、という点でしょう。するとこう考えることができます。機会便乗型、惨事便乗型の復興の場にしよう、と。被災した住民は潜在的な扇動者・暴動者なのでとっとと退場してもらい、空いた土地をグランドゼロにして一から新たな都市計画に基づいて復興してしまおう、と。

 レベッカ・ソルニット氏の「災害ユートピア」を読まれた方は、被災直後のニューオーリンズで住民達がどう扱われたかを知っています。ハリケーンから10年後、ニューオーリンズは「起業のまち」として復興を果たしたと言います。かつてのニューオーリンズといえば黒人の多い南部の町、ジャズの聖地として名高いものでしたが、多くの住民が黒人であることが指し示すように経済的には貧しい地域だったでしょう。その貧しき被災者たちは復興したニューオーリンズに以前と同じレベルの暮らしを得ることが出来たのでしょうか。
 現在、プエルト・リコが置かれて居る状況はかつてのニューオーリンズでありハイチであると私は思います。数年後にプエルト・リコが見違えるように復興したとしても、おそらく被災住民でその恩恵に預かるのは一部で、多くの貧しき人々には悲惨な未来が待っていると思います。その上、ハリケーンの被災以前から問題視されていた石炭火力発電所の廃棄物問題はそのまま現存し、プエルト・リコの人々が安全な飲料水にアクセス出来ずにいます。未来に渡っての健康被害は深刻なものだと思います。

Democracy Now!
"Five Months After Maria, San Juan Mayor Decries “Disaster Capitalism” & Privatization in Puerto Rico"
https://www.democracynow.org/2018/2/19/five_months_after_maria_san_juan

"Toxic Coal Ash Being Dumped in Puerto Rico, Which Already Suffers Worst Drinking Water in the Nation"
https://www.democracynow.org/2018/3/9/toxic_coal_ash_being_dumped_in

 これは米国に限ったことではなく世界中で、日本で起きていることです。福島や熊本に代表される数々の被災地が、今どういう状況下に置かれているでしょうか。つまり、中東、アフリカや中南米などで起きていることを知ることは、日本で起きていることを知ることなのです。
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 海坊主さんの結びの言葉:「中東、アフリカや中南米などで起きていることを知ることは、日本で起きていることを知ることなのです。」は至言です。
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カダフィの復讐

マスコミに載らない海外記事2018年4月 7日 (土)より転載

カダフィの復讐
大佐の呪いが帰ってきて、彼の国を破壊し、彼を殺害させた人物を悩ませている
Abdel Bari Atwan
2018年3月23日
raialyoum

元フランス大統領ニコラ・サルコジが、2007年選挙運動で勝利するための資金として、前リビア指導者ムアマル・アル・カダフィから、5000万ユーロ以上受け取ったかどで、尋問のため拘留され、後に保釈金を納めて釈放されたというニュースを、何百万人ものリビア人や多くのアラブ人やイスラム教徒は嬉しく感じたに違いない。リビアに対してなされ、リビアを破綻国家に変え、何万人もの国民が死亡し、更に何百万人もが出国し、近隣諸国で惨めな暮らしをさせている2011年、NATO爆撃作戦の直接の犠牲者こそ一番そう感じているはずだ。これは祖国に残っている人々の方が暮らし向きが良いことを意味するわけではない。大半の場合、彼らの状況は一層酷い。

フランスのサルコジ取調官は、汚職、資金洗浄とフランス選挙運動資金法違反を含め、彼による犯罪行為の複数訴因の重大な証拠を保持していることを認めた。

カダフィが、サルコジがエリゼ宮殿入りするのを助け、今や彼の破滅と拘留と、長年のスキャンダルにまみれた後の取り調べをもたらしているのは皮肉なことだ。

サルコジは、NATOのリビア空爆を仕掛け、カダフィが捕らわれ、不快で残虐なやり方で即座に殺害されるようにすることで、リビア指導者の秘密を、彼の遺体とともに、リビア砂漠の不明の場所に埋めることができると考えていたのだ。‘大佐の呪い’が帰ってきて、サルコジにつきまとい、彼の政治的、個人的将来を破壊し、歴史のゴミ箱の彼に実にふさわしい場所に閉じ込めるとは知らなかったのだ。

彼の後継者連中がリビアにもたらしたことを目にして、今カダフィ時代を懐かしんでいる何百万人ものリビア国民は、フランス系レバノン人実業家ジアド・タキエッディンに感謝すべきだ。彼は200ユーロと500ユーロ紙幣が詰まった三つのカバンを、サルコジが内務大臣だった時に、彼の補佐官に渡し、内務省で彼と直接会ったことを明かし、それをカダフィ政権が5000万ユーロの現金をサルコジ選挙運動に提供したという、元リビアリビア諜報庁長官、元外務大臣のムーサ・クーサの宣誓供述書で裏付けたのだ。

2001年3月、NATO介入工作におけるサルコジの役割が明らかになった後、カダフィ自身このことを演説で語っていた。“私はサルコジが権力の座につくのを助けた。彼が大統領になれるように金をやった… 彼は内務大臣だった時にやってきて、私のテントを訪問し、支援を求めた。”カダフィの息子サイフ・アル・イスラムは、テレビ・インタビューで“道化師”サルコジは“彼の選挙運動資金にするためリビアから受け取った金を返す”べきだと述べた。

サルコジが有罪判決を受ける可能性は十分ある。カダフィと違い、証人の大半はまだ存命で、証言するよう出頭を命じたり、証人陳述をするよう検事が尋問に赴いたりすることが可能だ。そうした人々には、サイフ・アル・イスラムや、元情報長官アブドゥラ・アル・セヌシ(在リビア)、ムーサ・クーサ(在カタール)も、元カダフィ司令部のトップ、バシール・サレフ (現在、在南アフリカ)などがいる。

日刊紙フィガロによれば、取調官に、サルコジが、自分はカダフィが彼に対して始め、カダフィの子分が継続しているキャンペーンの被害者で、おかげで、2012年選挙で負けたと主張し、あらゆる起訴事由を否定したのは皮肉なことだ。

サルコジは、再選の狙いこそ失敗したかも知れないが、彼の計画のおかげで、リビア国民は国や治安や普通の暮らしを失い、国内、国外の何白万人にとり、国は地獄へと変えられたのだ。

これらリビア国民には、サルコジの当然の報いをうれしく思い、少なくとも彼が投獄されるのを目にしたいと思う権利がある。彼には、誰も想像していなかった、 より深刻なことに、今日まで継続し、おそらく今後も長く続くであろう死と破壊をリビアにもたらした主な責任がある。

これは、NATOと、その戦闘機が自由と社会的公正をもたらし、明るい未来のための治安と安定と繁栄のモデルを確立するだろう信じて、リビア史上最大の詐欺を味あわされた善良なリビア国民の呪いだ。この呪いはサルコジに一撃を与えたが、自分たちが何をしたか承知しているリビア人やアラブ人の指導者連中を含め、あの陰惨な陰謀に共謀した他の連中も追求するだろう。

復讐で、カダフィや、35,000人のNATO爆撃犠牲者が生き返ったり、NATO爆撃で権力の座につき、国中に死と破壊を広め、リビアから国有財産としてカダフィが残した3600万ドル以上を略奪した武装集団が追放されたりすることはない。しかし望めることとして一種の最低限の天罰にはなる。

記事原文のurl:https://www.raialyoum.com/index.php/qadhafis-revenge-2/
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リビアで二度と見られなくなる16項目 という 2011年10月26日に翻訳した記事も合わせてお読み頂きたい。
リビアで二度と見られなくなる16項目
2011年10月24日、Sayaによる投稿記事
1.リビアには電気代の請求書が存在しない。電気は全国民、無料だ。
2.融資には金利がなく、リビアの銀行は国営で、全国民に対して与えられる融資は、法律で金利ゼロ・パーセント。
3.リビアでは住宅を所有することが人権と見なされている。
4.リビアでは全ての新婚夫婦が、新家族の門出を支援するため、最初のアパート購入用に、政府から60,000ディナール(50,000ドル)を受け取る。
5.リビアでは教育と医療は無償。カダフィ以前、識字率はわずか25パーセントだった。現在、識字率は83パーセント。
6.リビア人が農業の仕事につきたい場合には、農園を始めるための、農地、家、器具、種、家畜が、全て無料で与えられる。
7.リビア人が必要な教育あるいは医療施設を見いだせない場合、政府が外国に行くための資金を支払い、さらには実費のみならず、住宅費と自動車の経費として2,300ドル/月、支払われる。
8.リビア人が自動車を購入すると政府が価格の50パーセントの補助金を出す。
9.リビアの石油価格は、リッターあたり、0.14ドル。
10.リビアに対外債務は無く、資産は1500億ドルにのぼるが、現在世界的に凍結されている。
11.リビア人が、卒業後就職できない場合は、本人が雇用されているかのごとく、特定職業の平均給与を、職が見つかるまで国が支払う。
12.リビア石油のあらゆる売上の一部がリビア全国民の銀行口座に直接振り込まれていた。
13.子供を生んだ母親は、5,000ドル支払われる。
14.リビアでは、パン40斤が0.15ドル。
15.リビア人の25パーセントが大学の学位を持っている。
16.カダフィは、この砂漠国家のどこででも自由に水が得られるようにするため、大人工河川計画として知られる世界最大の灌漑プロジェクトを遂行した。
Great Manmade River

記事原文のurl:www.disinfo.com/2011/10/16-things-libya-will-never-see-again/

プーチン大統領の一般教書演説

2018年3月1日
Paul Craig Roberts
マスコミに載らない海外記事より転載
プーチン大統領は、連邦議会、ロシア国民と世界中の人々に対して注目に値する演説を行った。http://en.kremlin.ru/events/president/news/56957

演説の中で、プーチン大統領は、新しいロシア核兵器の存在をあかし、ロシアには、アメリカ合州国と、そのとるにたりないNATO諸属国に対して、圧倒的な核の優位があることを反駁の余地無く明らかにした。
ロシアの能力を考えると、アメリカが今や超大国としての資格があるかどうか明らかではない。

もしワシントンの狂ったネオコンと軍安保複合体がこれら兵器を保有し、ロシアが保有していなければ、ワシントンが対ロシア攻撃を仕掛けただろうことには、ほとんど疑念はないと思う。

ところがプーチン大統領は、ロシアには領土的野心も、覇権という野望も、いかなる国を攻撃する意図もないと宣言した。兵器は、欧米が長年にわたり、ロシアとの和平と協力を受け入れることを断固拒否し、逆にロシアを、軍事基地や弾道ミサイル迎撃ミサイル・システムで包囲していることに対する必須の対応だとプーチンは説明した。

プーチン大統領はこう述べた。“アメリカ合州国や欧州連合との通常の建設的な交流に関心があり、良識が打ち勝ち、パートナーたちが公正で平等な協力を選択することを期待している. . . . 我が国の政策は決して例外主義を求める野望に基づいてはおらず、我々はわが国の権益を守り、他の国々の権益を尊重する。”

ワシントン経済制裁とプロパガンダによって、ロシアを孤立化させ、欧米による増大する軍事的包囲に対応するロシアの能力を阻止するというワシントンの取り組みは失敗したとプーチン大統領は述べた。軍事的観点から、ロシアの新兵器は、アメリカ/NATOの手法丸ごと“無効になる”。“軍事分野も含め、ロシアの発展を抑制するための経済制裁は… 効果が無かった。” 彼らはロシアを封じ込めることに成功していない。彼らはこれを認識する必要がある… 我々全員が乗っている船を揺するのは止めなさい。”

すると、何をすべきなのだろう? 欧米は正気になるだろうか? それとも、欧米は借金漬けで、ワシントンが復活させた冷戦を強化する、肥大した役に立たない軍事産業にどっぷり漬かっているのだろうか?

欧米には、立ち返るべき正気などないと私は思う。ワシントンは“アメリカ例外主義”に完全に没頭しており、“必要欠くべからざる国”という極端な傲慢さが全員を悩ませている。ヨーロッパ人は、ワシントンに金で雇われている。プーチンは、ヨーロッパの指導者たちが、ロシアをおじけづかせようとすることの無益さを理解し、核戦争へと向かう、ワシントンのロシア嫌いを支持するのを止めるのを期待しているのだと私は確信している。ロシアが“エスカレーションと挑発の道”を選んでいると非難したイギリスのギャヴィン・ウィリアムソン国防相のばかげた反応に、プーチンが失望したのは確実だ。

ワシントンの単独主義に何らかの制限があることを認めたくはないので、ネオコンは、ロシアの能力が大したものではないように言うだろう。一方、軍安保複合体は、我々を“ロシアの脅威”から守るべく、より多くの予算を要求するため、ロシアの優越をあおり立てるだろう。

ロシア政府は、ロシアの権益に配慮し、協力的な態度で共に働くことをワシントンが拒否するという長年のいらだたしい経験から、その理由が、アメリカの力が、ロシアにアメリカの指導力を受け入れるよう強いることができるというワシントンの信念だと結論を出したのだ。このワシントンの妄想を粉砕することが、プーチン大統領によるロシアの新たな能力の力のこもった発表の理由だ。

演説の中で彼は言った。“誰も私たちと話したがらない。誰も我々に耳を傾けたがらない。今度は聞いてもらおう。”プーチン大統領は、ロシアの核兵器は攻撃のためではなく、報復のために確保しているが、ロシアやロシアの同盟諸国に対するいかなる攻撃も“付随するあらゆる結果を伴う”即座の反撃を受けることになると強調した。

欧米の覇権と恫喝の政策が実行不可能であることを明らかにした上で、プーチン大統領は再びオリーブの枝を差し出した。世界の諸問題を解決するため共に働こうではないか。

ワシントンが醸成した高まる緊張を終わらせるのにロシア外交が成功することを私は望んでいる。とは言えロシア外交は、おそらく二つの打ち勝ちがたい障害に直面している。一つは肥大化したアメリカ軍安保複合体が、1兆ドルの年間予算と、それにともなう権力を正当化するため主要な敵を必要としていることだ。もう一つの障害は、アメリカ世界覇権というネオコン・イデオロギーだ。

軍安保複合体は、アメリカのあらゆる州で日常化している。軍安保複合体は雇用主で、主要な政治運動献金源なので、上院議員や下院議員が軍安保複合体の権益に逆らうことがほとんど不可能になっている。アメリカ外交政策界には、狂ったネオコンに対する拮抗力がまだないように見える。ネオコンが作り出したロシア嫌悪は、今や普通のアメリカ人にまで影響している。この二つの障害が、トランプ大統領がロシアとの関係を正常化するのを阻止するのに十分なほど強力なことは証明済みだ。

おそらく次の演説では、プーチン大統領は、直接ヨーロッパ人に訴え、ワシントンのロシアに対する敵意を支援することが、一体どうしてヨーロッパの利益になるのか問うべきだ。いよいよとなった場合、アメリカの弾道弾迎撃ミサイル、アメリカ核兵器やアメリカ軍事基地を受け入れているあらゆる国々が一体どうして破壊を逃れると期待できようか?

NATOと、アメリカの前進基地がなければ、ワシントンは世界を戦争に追いやれない。問題の基本的な事実は、NATOは平和に対する障害だということだ。

Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリプス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼 の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2018/03/01/putins-state-union/
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ロシアゲートで軍産に反撃するトランプ共和党


2018年2月26日   田中 宇 ブログ転載


ロシア当局が、2016年の米大統領選挙に際し、トランプを有利に、クリントンを不利にするための工作活動をしたという「ロシアゲート」の疑惑を、米諜報界、クリントン陣営・米民主党、米マスコミ主流派などが主張してきた。米諜報界は、この対米工作をロシアのプーチン大統領自身が指揮していたと(根拠を示さずに)言っている。16年夏に何者かが米民主党本部(DNC)のサーバーからメールの束を不正にコピーしてウィキリークスに送って公開し、クリントン陣営が党内のライバル候補だったバーニー・サンダースを不正に妨害していた事実などが発覚した「DNCハック事件」が起きたが、米諜報界は、これもプーチンが直接指揮してやったことだと言っている。 (Russian interference in the 2016 United States elections - Wikipedia)

(「ロシアゲート」には、ロシアがトランプだけでなくサンダースや、緑の党のジル・ステインも支援していたというのが入っている。これは要するに「ロシアはクリントンを嫌っていた=ロシアに敵視されるクリントンこそ米大統領にふさわしい」という、選挙時の米マスコミのクリントン支持の裏返しにすぎないともいえる。クリントン家もウラニウム疑惑などロシアとの裏の関係がかなり深い。サンダースは、ロシアからの介入について、自分は知らない、クリントンの方がはるかに詳しいと述べている) ("They Had More Information Than Us" - Sanders Blames Clinton For Not Exposing Russian Meddling) (Bernie Sanders makes no comments about Russia’s alleged support for him in 2016)

 ロシアゲートの最大の問題は、DNCハックやその他の対米工作活動を「ロシアがやった」と言える根拠が何もないことだ。米当局(米諜報諸機関、FBI、司法省)は、何の根拠も示さずに「ロシアがやった。プーチンが直接指揮した」と言い続けている。米当局の発表なので、世の中的には、これが「事実」とされている。だが、フセイン政権のイラクに大量破壊兵器がなかったのに米当局が「ある」と言ってイラク侵攻したのと同様、ロシアゲートも政治目的の歪曲であり、無根拠な与太話に依拠している。 (2016 Democratic National Committee email leak - Wikipedia) (Trump-Russia collusion proof is yet to come, US lawmaker says)

 ロシアゲートの「根拠」の大黒柱は、後述する「スティール報告書」だが、今ではFBI長官など米当局自身が、同報告書は信頼できないと言っている。マイケル・フリン、ポール・マナフォート、ジョージ・パパドポロス、カーター・ペイジといったトランプの側近や協力者たちが起訴されたが、いずれも「スパイ罪」でなく、もっと軽微・無関係な「証言にウソがあった」「トランプ陣営に入る前に別件で無許可活動していた」といった罪状だ。FBIや司法省が彼らを本筋から外れた微罪でしか起訴できなかったことは、ロシアゲートが濡れ衣であることを、むしろ露呈している。DNCハック事件はおそらく、外部からの不正なサーバー侵入(ハッキング)でなく、DNC内部の誰か(クリントン陣営のやり方に不満だった人?)がメールの束をUSBメモリに不正コピーして持ち出したものだ。著名ハッカーのキム・ドットコムも「DNCハックは、ハックですらない」と言っている。 (Kim Dotcom: "Let Me Assure You, The DNC Hack Wasn’t Even A Hack") (George Papadopoulos - Wikipedia)

「ロシアが対米工作してトランプを勝たせた」というロシアゲートの本質は「トランプはロシアのスパイだ」という攻撃だ。選挙期間中から現在まで、米諜報界と民主党、マスコミは、この手の攻撃を続けてきた。FBIや司法省、諜報諸機関は、自分たちの上司であるトランプを、根拠も示さず容疑者扱いし続けている。これは強烈な反逆だ。なぜ無根拠なのに延々と主張・反逆し続けるのか。それは、米諜報界など米国の軍産複合体=深奥国家が米国と世界を支配(覇権運営)してきた体制を、トランプが壊そうとしているからだ。民主主義的に見れば、トランプの方が正当だが、覇権の歴史として見れば、第2次大戦後ずっと続いてきた軍産支配の体制の方が正当で、それを破壊するトランプは反逆者だ。 (Nunes Duels the Deep State) (トランプと諜報機関の戦い) (トランプ革命の檄文としての就任演説)

 ロシア敵視(かつての冷戦体制)は、戦後すぐ米国覇権が確立して以来の軍産の戦略の一つだ。トランプは選挙戦でロシア敵視の解除・対露和解を公約として掲げていた。ロシアとの和解を進めるため、選挙中から就任直後にかけてのトランプ周辺には、ロシアの上層部に人脈がある人々が集められた。それがフリン、マナフォート、パパドポロス、ペイジといった、のちに起訴された親露的な人々だった。微罪でしか起訴されなかった彼らは、親露人士であり、ロシア政府筋と接触していたものの、スパイでなかった。トランプ陣営のスパイ容疑は立証されていないが、軍産側からの攻撃が執拗なので、トランプはロシアとの和解を棚上げしている。 (軍産に勝てないが粘り腰のトランプ) (トランプ政権の本質)

(トランプは、ロシアと和解するよりも、米国に敵視され続けるロシアが中国などと組んで多極型世界を積極的に構築し、米覇権体制を崩していく「ネオコン方式」の方が効率的だと考え、方針転換したとも考えられる。トランプの昨年、方針転換を始めた後、ネオコンを敵視する重要側近のスティーブ・バノンを切っている) (トランプの新・悪の枢軸) (トランプの苦戦)

▼米議会内のメモの発表合戦によってしだいに露呈するロシアゲートの無根拠性

 ロシアゲートは反逆的な官製与太話であるが、それを指摘する人は、陰謀論者扱いされることが多い非主流派の分析者たちぐらいしかいなかった。軍産傘下のマスコミはそれを「事実」として喧伝し続けてきた。だが最近、そんな従来の状況が変わり始めた。これまでロシアゲートをめぐるトランプと米当局(FBI、司法省、諜報諸機関)との対立に関与するのを避けていた共和党の主流派が、今年に入ってトランプに味方し、FBIや司法省を批判する傾向に転じている。 (潰されそうで潰れないトランプ)

 共和党の主流派は、ブッシュ政権まで軍産と一心同体の勢力で、軍産に喧嘩を売りつつ大統領になったトランプを、当初は敵視する姿勢だった。だが、トランプが軍産に簡単に打ち負かされず、トランプは軍産と対峙しつつ覇権放棄の策略を世界各地・各分野に対して展開し、世界の軍産支配が崩れ、しだいにトランプが優勢になる中で、共和党の主流派は、軍産と結託し続けることをやめてトランプに味方する側に転じることで「勝ち組」に入る道を選ぶようになっている。米共和党は、従来の「軍産共和党」から「トランプ共和党」へと衣替えを始めている。トランプが共和党を乗っ取った、とも言える。 (GOP Rep Nunes on House Intel Committee Probe: ‘The Facts Are Not Bearing Out to What the Democrats Wanted It to Be’)

 その流れの一環で、米議会の両院で多数派となっている共和党議員団が、証拠がないのにロシアゲートを捜査し続けるFBIと司法省を批判する文書(メモ)を相次いで出すようになった。有名になったのは、米共和党の議会下院・諜報委員会のヌネス委員長が1月18日に機密文書として委員会に出し、2月2日に大統領令で機密解除・一般公開された「ヌネスメモ(別名FISAメモ、共和党メモ、GOPメモ)」だ。 (ヌネスメモの原文) (Read the GOP memo)

 このほか、1月4日に共和党の議会上院で、司法委員長のグラッシーと犯罪テロ小委員長のグラハムが連名でFBIと司法省あてに出した「上院メモ(別名グラッシー・グラハムメモ)」もある(2月5日に公開)。また、これらに対抗する逆批判のかたちで、議会下院・諜報委員会の民主党メンバーが1月29日に下院の議員全員に向けて「民主党メモ」を出した。いずれも関係議員限定の機密文書として作成された後、内容を公開すべきだとの主張に押され、FBIと司法省が(自分たちに不都合なので)公開すべきでないと考えた箇所を黒塗りした後、一般公開されている。 (上院メモの原文) (民主党メモの原文)

 3種類のメモが扱っている主題は共通している。ロシアゲートの「証拠」の大黒柱である「スティール報告書」の信憑性が疑わしいにもかかわらず、FBIと司法省は、同報告書をほぼ唯一の「証拠」として、16年の大統領選の期間中とその後にトランプ陣営の協力者の一人であるカーター・ペイジをロシアのスパイ容疑で監視・盗聴する捜査令状(スパイ捜査用のFISA令状)を獲得していた。共和党側は、こうしたFBI・司法省のやり方は不正・違法だと主張している。民主党側は、共和党の主張はこじつけだと言っている。メモの主題は、ロシアゲート全体から見ると一部にすぎないが、FBIと司法省のやり方が不正であるなら、ロシアゲート全体の捜査の打ち切りや全面見直し・無根拠なまま捜査継続させない措置が講じられる、つまりトランプ側の勝利になりうる。 (These Reports Allege Trump Has Deep Ties To Russia - BuzzFeed) (Sens. Graham and Grassley Release Letter Calling for a Criminal Investigation of Christopher Steele)

 ロシアゲートの「証拠」の大黒柱である「スティール報告書」は、ロシア当局筋を情報源にしたと言いつつ元英国諜報員のクリストファ・スティールがまとめた。大統領選挙からトランプ就任前にかけての時期である16年6月から12月の日付が入った17の諜報メモの集合体である35ページの同報告書によると、ロシアの諜報部は8年前からトランプと親しくしており、トランプ訪露の際に売春婦をあてがったりした。DNCハックの犯人はロシアの諜報部で、トランプを有利にするためにDNCサーバーに侵入したという。選挙時のトランプ陣営に、ポール・マナフォートやカーター・ペイジといったロシアのスパイがいた、とも報告書は書いている。 (Trump–Russia dossier - Wikipedia) (スティール報告書の原文)

 この報告書には大きな問題が2つある。一つは、この報告書は民主党本部(DNC)とクリントン陣営がスティールに資金を出して頼んでまとめさせたものだということ。クリントン陣営は、法律事務所(パーキンス・コイエ)と民間調査会社(フュージョンGPS)を経由してスティールに金を出した。クリントンが、大統領選のライバルだったトランプを不利にするために作らせた報告書であり、中立的なものでない。この点は広く報じられており「事実」と考えて良い。クリントンに雇われたパーキンスコイエ自身が、スティール報告書はクリントンとDNCが資金源だと認めている。フュージョンGPSはロシアと関係ある会社であり、トランプよりもクリントンの方がロシアと裏の関係を持っている。 (Hillary Clinton is Still Paying Private Spies to Dig Up Dirt on Trump) (Nunes: "Clear Link" Between Democrats And Russia During 2016 Election)

 報告書の2つ目の大きな問題は、トランプとロシアが結託していたことや、ロシア当局が米大統領選挙でトランプを優勢にする動きをしたことについて、具体的な証拠を何も提示していない点だ。報告書に書かれた情報源はロシア政府筋の人物だというが、A、B、Cなどすべてアルファベット一文字の匿名だ。モスクワの売春婦の話や、露当局がDNCサーバーをハックした話は、架空のでっち上げで十分に書ける話だ。報告書は、中身がスカスカである。FBI長官だったコミーも、スティール報告書は「みだらな内容で、信憑性も確認できない(salacious and unverified)」と議会証言で述べている。 (スティール報告書の原文) (Why is the Media Ignoring the Real Bombshell FISA Memo?)

 共和党の上院メモは、FBIと司法省は、ロシアゲートの捜査において、スティール報告書に頼りすぎてきたと指摘している。クリントン陣営の代わりにFBIがスティールにカネを出して追加の報告書を書かせようとする計画もあった。FBI長官だったコミーは、17年3月の証言で「スティールは信用できる」と言っていたのが、スティール報告書の中身がないと問題になった後の17年6月の証言では「スティール報告書の内容は立証されていない」と後退した。 (The Memo and the Mueller Probe) (The Media Stopped Reporting The Russia Collusion Story Because They Helped Create It) (FBI once planned to pay former British spy who authored controversial Trump dossier)

 上院メモの6ページによると、スティールは公開されている報告書のほかに、16年10月19日付けの未公開メモを書いており、そこには、スティールの直接の情報源がロシア政府筋の人物でなく、クリントン家の友人(氏名は黒塗りされているが、他の分析者によるとクリントン径の政治活動家であるコディ・シアラー Cody Shearer)がロシア筋から得たとされる情報を、米国務省に流し、米国務省がそれをスティールに流した、と書いてあるという。コディ・シアラーは最近、スティール報告書を超える新たな報告書を書くと言っている。シアラーがスティール報告書のゴーストライターであるという話は信憑性がある。クリントン陣営は、スティール報告書の資金源だっただけでなく、情報源(捏造源)でもあったことになる。 (Clinton Associates Fed Information to Dossier Author Steele, Grassley-Graham Memo Says) (Dossier author Steele wrote another anti-Trump memo; was fed info by Clinton-connected contact, Obama State Department) (Second Trump-Russia dossier being assessed by FBI)

 民主党メモは、司法省がトランプ陣営のカーター・ペイジを監視・盗聴するFISA捜査令状を獲得する際、ペイジがロシアのスパイと疑われる根拠としてスティール報告書以外の3種類の情報をFISA法廷に提出したと書いている。だが、その3種類が箇条書きされているメモのくだりは司法省自身によってべったりと黒塗りされ、非公開のままだ。おそらく黒塗りの下には、公開すると司法省自身の信用失墜が加速するような、スティール報告書並みの与太話が3つ列挙されているのだろう。 (House Intel Democrats Release GOP Counter-Memo) (民主党メモの原文)

 FBIや司法省は、トランプだけでなく戦後の米国の各政権に対し、マスコミにスキャンダルをリークして騒動にして、訴追するぞと政権の高官たちを脅すことで、言うことを聞かせてきた。これが米国の軍産支配の手口である。ロシアゲートはオバマ時代に始まった(捏造された)が、オバマはこの問題に関して軍産の言いなりだった。オバマら歴代のほとんどの政権は、大統領や高官たちが、ある程度FBIなど軍産の言いなりになり、軍産と大統領が談合して政権を維持するが、ニクソンやトランプは例外的に軍産に戦いを挑み、その結果、大きな政争になっている。ニクソンは辞任して軍産に負けたが、トランプは負けておらず、軍産潰し屋としてニクソンより有望だ。 (Deep State & The FBI – Federal Blackmail Investigation) (TRUMP ATTORNEY: Susan Rice Secret Meeting With Comey, Obama Took Place ONE DAY Before Comey Briefed Trump on Dossier)

 米諜報界やFBI、マスコミと並び、米国務省も、伝統的に軍産複合体の一部だ。下院諜報委員長のヌネスは、第2弾のメモとしてロシアゲートにおける国務省の不正な動きを指摘すると予告している。米国の諜報界は、第2次大戦中に英国の諜報界によって作られている。米英(と「ファイブ・アイズ」の豪州NZカナダ。それとイスラエル)の諜報界は一体のものであるといえるし、米諜報界は英諜報界の一部であるともいえる。米CIAは、米国民が絡んだ諜報活動や、後で発覚した時に米国で違法とされそうな諜報活動をするときに、英MI6の名義を借りる。英国という外国勢がやったことなら、米議会も宣誓して証言しろと命じにくく、真相究明が難しくなる。だからスティール報告書は、MI6のスティールが(名義貸しの)著者であり、中身の情報は米国務省などいくつもの勢力を経由したことになっている。イラク侵攻前の捏造である「大量破壊兵器」の情報源にもMI6が混じっていた。 (The US-UK Deep State Empire Strikes Back: ‘It’s Russia! Russia! Russia!’) (Is The Steele Dossier Full Of "Russian Dirt" - Or British?) (リベラルとトランプ) (Former Official Confirms Steele Dossier Was Shared With Obama State Department)

 もうひとつ書いておかねばならないのは「ロシアは米大統領選に際して何も政治工作をしなかったのか」についてだ。ロシアのような大国が、覇権国の大統領選挙に対して政治工作しないはずがない。プーチンのロシアは、米国のロシア敵視を何とかやめさせたいと考えてきた。日本ですら、外務省などがクリントン陣営に対してさかんに働きかけていた(日本外務省はトランプ勝利を全く予測できなかった大間抜け)。ロシアは、トランプだけでなく、ビルクリントン時代にウラニウムワンのキックバックで親密な関係を作ったヒラリー陣営にも各種の働きかけをしていたはずだ。対露関係では、クリントンよりトランプの方が素人であり、新参者だ。トランプは、カーター・ペイジなどというレベルの低い親露人士に対露関係の一端を担わせざるを得なかった。 (Carter Page From Wikipedia) (FISA-Gate: The Plot To Destroy Our Republic : Justin Raimondo) (The Russian Indictments)

 捜査当局に対してウソの証言をしたとして昨年末に起訴さたトランプ元側近(安保担当大統領補佐官)のマイケル・フリンは2月末、裁判所から、犯罪を構成する証拠が不十分なのでこのままだと無罪になると言われた。ロシアゲート担当のミュラー特別検察官は追加の証拠など用意できないだろうから、フリンは無罪になる可能性が高い。フリンはトランプ政権の初期に、対露関係の改善を任務として動いており、彼が辞めさせられて起訴されたのはロシアゲートの一部である。フリンの無罪は、ロシアゲートをめぐるトランプと軍産(FBI、司法省)との戦いで、トランプ側が優勢であることを示している。フリンの無罪が、ヌネスメモの公開など、議会でのトランプ共和党の反撃と同じ時期に起きていることが興味深い。ミュラー検察官は最近13人のロシア人を起訴したが、これまた事件の本筋と被告たちの関係があいまいで、濡れ衣臭が強い。 (In Unexpected Twist, Judge In Flynn Case Asks Mueller For "Exculpatory Evidence") (フリン辞任めぐるトランプの深謀) (Mueller’s Fraudulent Indictment : Justin Raimondo)

 いまだにトランプ敵視の傾向である米国のマスコミは、ロシアゲートをめぐるトランプと軍産の戦いを、できるだけ報じないか、2大政党間の中傷合戦として伝えている。軍産の一部であるマスコミの歪曲姿勢も、軍産とトランプの戦いの一部だ。戦いはまだ続くが、スティール報告書の権威は失われ、FBIと司法省はますます無根拠になってロシアゲートの捜査を進めにくくなる。マスコミはトランプに濡れ衣をかけにくくなっていく。これで今秋の中間選挙で共和党が与党の座を守れば、共和党の主流派のトランプ敵視の傾向が大きく下がって「トランプ共和党」が確立し、トランプ再選の可能性が高まる。 (Grassley-Graham Memo Affirms Nunes Memo — Media Yawns) (マスコミを無力化するトランプ)

トランプは多極化(アメリカ覇権の放棄)を目指している。

アメリカ隷属のみでは、これからの世界で韓国以下の序列になるのでわないか。
オーストラリア、ニュージーランド、フィリピン、ベトナム、台湾と共に西太平洋同盟の構築を急ぐべきとかんがえる。

以下」
国連総会の128対9対35は何を意味しているか
田中良紹 | ジャーナリスト
2017/12/24(日) 14:54 から転載

フーテン老人世直し録(345)

極月某日

 国連は21日に緊急総会を開き、米国がエルサレムをイスラエルの首都と認定したことの撤回を求める決議案を採決した。結果は日本を含むロシア、中国、英国、フランス、ドイツなど賛成128か国、反対は米国、イスラエル、パラオなど9か国、棄権はオーストラリア、カナダ、メキシコなど35か国で、国際社会を主導してきた米国の孤立が鮮明になった。

 翌22日に国連安全保障理事会は米国の北朝鮮に対する追加制裁決議案を全会一致で採決したが、しかし米国はぎりぎりまで中国、ロシアと協議を行い、外貨を稼ぐために国外で働く北朝鮮労働者の送還ではロシアの要求を受け入れ1年以内を2年以内に延長、また中国から北朝鮮への原油供給についても中国の意向を入れて「禁止」に踏み込まなかった。

 年末ぎりぎりに行われたこの2つの国連決議を見る時、1991年にソ連が崩壊して唯一の超大国となった米国が「新世界秩序」を求め世界の一極支配を目指したことが幻だったかのように思える。良くも悪くも世界のリーダーであった米国の姿がもはや見えない。

 トランプ大統領は「アメリカ・ファースト」を繰り返し叫ぶことで米国民に満足感を与えながら、しかし中東とアジアで騒乱の種を播き散らし、その解決を米国が一国で背負うのではなく他国の手に、とりわけ中国とロシアに背負わせようとしている。

 エルサレムをイスラエルの首都と認めたことは米国が中東和平の仲介役を放棄したことを意味すると以前のブログに書いた。逆に言えばトランプ大統領は米国が仲介役を降りるためにエルサレム問題を持ち出した可能性がある。米国が降りれば中東地域におけるロシアと中国の存在感は増し、和平交渉の仲介役は米国単独から米中ロ三極になる。

 一方の北朝鮮問題でも、軍事オプションをちらつかせて米国が北朝鮮に戦争を仕掛ける状況を作りながら、しかし北朝鮮を背後から支える中国とロシアに対しては国連の制裁決議に賛同できるよう顔を立てる。米国中心で解決しようとはしていない。

 勿論、こうした考えとは異なる見方を主張することもできる。エルサレム問題はアラバマ州の上院補選で宗教保守の票を得たいための国内向け発言とか、北朝鮮問題でも年明けには本気で戦争する気があると言う人もいる。

 しかし上院補選で票を得るために世界のリーダー役を降りるのか、また中国、ロシアと国境を接する北朝鮮に本気で戦争をやりに行くかと言えば、可能性は極めて低いとフーテンは思う。

 トランプ政権のロシアや中国に対する姿勢は冷戦崩壊後のクリントン、ブッシュ(子)、オバマの歴代政権とは真逆である。米国が一時期目指した一極支配という目的を捨て去り、多極構造の世界を作ることをトランプ大統領は使命と考えているのではないかという気がする。

 冷戦終了後の米国議会を見てきたフーテンは、一極支配を目指す米国の帝国主義的な動きを様々な角度から見てきた。そのせいかトランプ大統領の言動もその延長上で捉えてきた。だから他のメディアと同様にトランプ大統領を言うこととやることがバラバラの「予測不能」の大統領と考えてきた。

 しかし一極支配を目指した米国から脱却するための言動だと考えれば、言うこととやることがバラバラな理由も理解することができる。それまでの路線を変えるという作業は全く単純ではないからだ。

 それまでの路線を支持する者もその利益に預かっている者も数は多く、しかもそれが主流派を形成している。その中で路線を変えるには、それらの者を満足させながら、しかし気がつけば路線が変わっていた形にもっていく必要がある。最初から目的を明確に示せば多数の主流派にすぐに潰されて終わりになるだけだ。

 その作業をやるにはトランプ大統領のキャラクターがうってつけかもしれない。まず政治の素人であるから何を言っても何をやっても仕方がないと思われる。そのうえ論理的でも真面目でもないから大胆にふるまえる。常識的な大統領を演ずる必要がなく目くらましがやりやすい。

 これまでの米国はソ連が崩壊したで世界を一国で支配しようと考えてきた。92年にペンタゴンが作成した機密文書「国防計画指針(DPG)」は、「米国に対抗できる能力を持つ国を絶対に許さない」との方針を示し、ロシア、中国、日本、ドイツを「仮想敵」と規定した。

 93年に誕生したクリントン政権はまず日本経済の弱体化に取り組む。「年次改革要望書」によって日本の経済構造を米国に都合の良いように変え、一方で日本をけん制するため米国は中国経済と緊密な関係を持った。

 そして経済では中国と協調しながら安全保障面では中国、北朝鮮と敵対する。そのため日米安保体制を強化してアジアに10万の米軍を配備した。また「人道目的なら国連決議なしでも武力行使ができる」と宣言し、米国は「世界の警察官」として単独で米国の価値観を世界に広めようとした。米国が中東和平の仲介者となり「オスロ合意」を取り付けたのもこの時代である。

 次にネオコンやキリスト教原理主義の影響を受けたブッシュ(子)大統領が登場すると、本土が9・11同時多発テロに襲われたことから、米国はアフガニスタンとイラクに戦争を仕掛ける。中でもイラクとの戦争は嘘の情報をもとにした先制攻撃で、それがイスラム原理主義との泥沼の戦いに米国を引きずり込む。

 一方で米国経済は大恐慌以来の破たんに見舞われ、戦争と経済不況で大統領不支持率は戦後最悪を記録した。またブッシュ大統領がイラン、イラク、北朝鮮を「悪の枢軸」と呼んだことで米国の先制攻撃を恐れた北朝鮮は本格的な核武装に踏み切る。

 オバマは中東から米軍を撤退させるために選ばれた大統領である。軍の代わりにCIAなど情報機関を使った作戦でビンラディン容疑者を暗殺し、力を中東から中国が台頭するアジアに振り向ける戦略を採った。

 しかしウクライナやシリア問題でロシアと対立、南シナ海問題で中国と敵対するなど「新冷戦」と呼ばれる世界分断の中で米国の覇権を維持しようと模索した。その構造を変えようとするのがトランプ大統領である。

 就任前からロシアとの関係修復や、中国包囲網と言われるTPPからの脱退を宣言していた。しかし側近には反中国が鮮明な人間もおりスタンスが明確だったわけではない。それが11月のアジア歴訪では中国が最大の外交舞台になった。それを見ると表と裏を使い分けながら一筋縄ではいかない外交を展開していくように見える。

 かつてニクソン政権は泥沼となったベトナム戦争から手を引くため、それまでの東西冷戦構造を終わらせる目的で誰もが予想しなかった米中接近を秘密裏に行った。中心にいたのはキッシンジャーである。その彼がトランプ大統領の背後にいて、これまで米国が目指した一極支配体制を転換させる役割を担っている可能性がある。

 あの時も米中接近は日本の頭越しに行われ、日本は大混乱して「ニクソン・ショック」と呼ばれた。一極支配の米国とつるんで行けば安泰だと考えるだけでは再び「ショック」に見舞われるかもしれない。多極化の中でどう生きるかに頭を切り替えないと、大きな間違いを犯す可能性がある。国連総会の2つの決議を見てフーテンはそれを感じた。
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