社会的共通資本

http://www.af-info.or.jp/blueplanet/doc/slide/2009slide-uzawa.pdf#search='社会的共通資本'

宇沢弘文氏の唱えられた新しい概念、強欲資本主義(新自由主義)に対する概念。
これから研究すべき概念である。
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日本を今なぜ「戦争ができる国」にするのか?

マスコミに載らない海外記事さんのブログ2016年6月 6日 (月)からです。

辞任を求めない都議会与党茶番。知事もひどいが、与党も同じ穴のむじな。知事だけ変えても根本的変革はありえない。国会も都議会も、売国与党による腐敗の極み。
沖縄では、駐留アメリカ軍兵士、今度は酔っ払い運転事故。撤退以外、解決策はない。そして東京では、航空機が民家の上を飛ぶようになる。これも、属国状態ゆえ。
この記事と直接つながる米中さや当てで、属国防衛相は、早速宗主国をヨイショ。見ていて悲しくなる。

航空機が民家の上を飛ぶようになることの背景も、米つきバッタ戦争相の背景も『日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか』矢部宏治著を読めばわかる。大いに納得した部分を引用させていただこう。95ページの記述だ。

「戦争になったら、自衛隊は米軍の指揮下に入って戦う」という内容はおなじですが、
「戦争になったと判断するのが米軍司令部である」
ことも、はっきりと書かれています。これがアメリカのもともの本音だったのです。
ここで昨年の安保法案の審議を思い出してください。あの国会のやりととの中で、もっとも奇妙だったのは、
「どのような事態のとき、日本は海外で武力行使ができるのですか」
「現時点で想定される存立危機事態とは、具体的にどのような事態ですか」
と野党議員から何度聞かれても、安倍首相や中谷防衛大臣は最後までなにも答えられなかったことでした。しかし、この条文を読めば、その理由は一目瞭然です。それは彼らが判断すべきことではなく、アメリカが判断すべきことだからなのです。

そうした中で、国会前4万人集会。

文中で触れられている、貿易協定という名の、大企業による国家乗っ取り条約について、大本営広報部は全く触れない。IWJのアーカイブで一部が見られる。IWJ会員になって、講演全てを見ていただきたい。小生の不安、杞憂でないことがお分かりいただける。

講演会 TPP協定は人々を”豊か”にするのか? ―貿易にグローバルな民主主義・社会正義を埋め込むために― 2016.5.30 講演者 ジョモ・K・スンダラム氏(経済学者)

ジョモ・K・スンダラム氏の下記記事を翻訳した。

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)、本当のコストいくつか:アメリカだけで約50万の雇用喪失 2016年3月1日

ヤマトの琉球王国化でよいのか日本

*********ヤマトの琉球王国化への道へまっしぐらの現在、国民の代表者の国会が国の最高機関である、との憲法に基ずく国にする最後のチャンスかもしれない、今度の参議院議員選挙***********

以下 2016年5月11日   田中 宇より転載

トランプ台頭と軍産イスラエル瓦解
2016年5月11日   田中 宇
 5月3日、米国インディアナ州の共和党の予備選挙で、ドナルド・トランプがライバルのクルズらに圧勝した。米大統領選挙は、まず2大政党がそれぞれの統一候補を夏の党大会で決めた後、11月の最終投票で2人のどちらかを選出するのが事実上の制度だが、トランプは7月の共和党大会の代議員を決める各州での予備選挙で勝ち続け、5月3日のインディアナ州で全代議員の過半数がトランプ支持者で占められる状態にした。これで、トランプが共和党の統一候補になることが確定的になった。ライバル候補だったクルズとカシッチが相次いで敗北を認め、立候補を取り下げた。トランプは、すでに1050万人の共和党員に支持されており、最終的に共和党史上最多の支持を集めることが予測されている。 (How Trump Won?and How the GOP Let Him) (Trump To Get More Primary Votes Than Anyone In History)

 党内民主制度で勝った以上、トランプが共和党の統一候補になり、トランプへの不支持を表明する者は離党するのが筋だが、それは簡単に進んでいない。共和党の上層部の大半は、これまでトランプを落選させようと動いてきた。911以降、共和党の上層部は軍産複合体系の勢力が席巻し、中東での連続的な戦争やロシア敵視策を進めてきた。だが、トランプはこれらの好戦策を採らず、日韓や欧州からの米軍撤退、ロシアとの協調など、むしろ軍産を潰す策を掲げている。 (世界と日本を変えるトランプ)

 トランプは、リーマン危機後の米当局による金融延命策に反対で、任期が来たらイエレン連銀議長に辞めてもらうと言ったり、米国債をデフォルトさせるかもしれないと示唆したりしている。彼は、軍産を懐柔するためか軍事費の増加を提唱しているが、その一方で大減税を主張しており、米国を財政破綻に誘導している感じがする。 (Trump would replace Yellen as Fed chief? That's a big red flag) (Donald Trump's Idea to Cut National Debt: Get Creditors to Accept Less) ('Unpredictable' Trump Sends Mixed Foreign Policy Signals)

 大金持ちのトランプは、自己資金で選挙戦を進め、他の候補たちのように党の資金に頼っていないので、党上層部は、カネを使ってトランプを従順にさせることができない。米国では、911以来の好戦策と、リーマン以来の金融延命策(金融界だけ助けて一般市民の生活は悪化)に対し、米国民が不満をつのらせているのに、共和党も民主党も上層部が(軍産や金融界からカネをもらっているがゆえに)国民の不満を無視して好戦策や金融延命策を続けている。だが、好戦策も金融延命策も、もう限界に達し、破綻しかけている。トランプはこの状況を見て選挙に参戦し、米国民の民意に沿う形で好戦策や金融延命策を潰す姿勢を打ち出し、大成功している。 (ニクソン、レーガン、そしてトランプ) (Trumped! Why It Happened And What Comes Next)

 マスコミや専門家(彼ら自身、軍産や金融界のカネで生きている)は、ムスリム入国禁止論や移民敵視など、本質的でないところでトランプを酷評してきた。軍産への従属を国是とする日本でもマスコミがトランプを誹謗中傷し、日本人は軽信的なので、多くの人がトランプを嫌っている。しかし実のところ、トランプが共和党を制したことは、米国の民主主義が、意外にも健全さを失っていなかったことを示している。

 軍産と金融界の影響下にある共和党上層部は、トランプを党の主導役として受け入れることが困難だった。党内最高の有力者であるポール・ライアン下院議長は5月6日に「まだトランプを受け入れることができない」と表明した。党内勢力の一つであるネオコンのウィリアム・クリストルは、党内の保守主義者を集めて脱党し、第3政党を作る方針を模索し始めた。 (Donald Trump's Warning to Paul Ryan Signals Further G.O.P. Discord) (GOP luminaries pick sides on Trump as party rift widens)

 とはいえ、共和党上層部のほとんどの勢力は、自分の党を分裂させて壊すつもりがない。共和党の上層部は、米国が2大政党制だからこそ、強い権力を持ち続けられている。彼らは党を割りたくない。トランプを「まだ」支持できないと言った下院議長のライアンもその一人だ。共和党内は近年、金融界を敵視する茶会派の草の根からの台頭などで分裂傾向が増し、ライアンは分裂をうまくまとめる技能を評価され、46歳と若いのに昨秋から議長をしている。うまくやれば彼は2020年の大統領候補になれる。 (Treading Cautiously, House's Ryan To Meet Trump) (Donald Trump, Paul Ryan To Meet To Work Out Differences; Party Unity Top Priority)

 米国は11月に大統領選と同時に上下院議員選挙も行われるが、共和党は多数派(下院の与党)を維持できそうで、ライアンは議長の座を守れそうだ。そんな彼が、トランプと決裂したいと思うはずがない。ライアンはむしろ、自分が党内の反トランプ派のまとめ役になってトランプと交渉することで、既存の党上層部とトランプを和合させたいように見える。ライアンはトランプに面会を申し込み、2人は5月12日に会う。両者の交渉は一度で妥結しないかもしれないが、7月の党大会の前までにまとまるだろう。 (It's Donald Trump's Party, Not Paul Ryan's)

 不動産事業で大儲けしたトランプは2011年まで、共和党より民主党に多く献金していた。その後は共和党に強く肩入れしたが、それは自分が大統領になるための動きだった可能性がある。草の根の支持を集めて民主的に共和党を乗っ取り、既存の党上層部に自分を支持しろと迫るトランプは、共和党に対して「敵対的企業買収」をかけて成功した感じだ。トランプにとって、共和党は自分が大統領になるための買収先でしかないが、ライアンやその他の共和党幹部の多くにとって、共和党は自分たちの人生そのものだ。トランプのせいで共和党が分裂解体すると、トランプ自身は大して困らないが、ライアンら議員団は非常に困る。 (Paul Ryan is bluffing with no cards, and Donald Trump knows it) (Donald Trump - Wikipedia) (Republican Party Unravels Over Donald Trump's Takeover)

 既存の共和党上層部は、敵対的買収を受けて陥落した企業の経営者員たちと同様、草の根の従業員(党員)の士気を気にして強気に振舞うが、裏では買収屋にすり寄ってと何とか折り合いをつけようとする。すでに、ジョン・マケイン上院議員、ディック・チェイニー元副大統領ら、ゴリゴリの軍産複合体の共和党の重鎮たちが「誰であれ、党内選挙で勝った人を大統領候補として支持すると、私は以前から言ってきた」という言い方で、トランプ支持を表明している。ブッシュ家は元大統領の父子がそろってトランプ不支持を表明したが、これは共和党を分裂させる目的でなく、むしろブッシュ家が政治から手を引く宣言をしたように見える。一つの時代が終わり、次の時代が来ている。 (McCain supports Trump for President) (Bush 41, 43 won't be endorsing Trump)

 共和党が分裂せず、米国の2大政党制が崩れないなら、トランプ化する共和党を離脱して新政党を作っても、2大政党以外を強固に排除する米国の選挙制度に押しつぶされ、ほとんど政治力を発揮できない。ネオコンのクリストルたちは「真の保守主義者(のふりをした守銭奴)」たちを誘って党外に出ることで、共和党浄化作業の「ゴミ箱」として機能しようとしている。 (Conservatives Are Taking The Wrong Lessons From Trump's Success)

 トランプ支持を表明した人々の中で私が最も驚いたのは、マケインやチェイニーでない。ラスベガスなどのカジノやリゾートを経営する不動産王で、共和党に巨額の献金をしてきたシェルドン・アデルソンが、5月6日にトランプ支持を表明したことだ。ユダヤ人である彼は、ネタニヤフ首相らイスラエル政界とつながり、米共和党に対し、親イスラエルの政策をとり続けることを強要してきた。 (Sheldon Adelson backs Donald Trump, says he's good for Israel) (Casino magnate Sheldon Adelson endorses Donald Trump for president)

 アデルソンは、イスラエルで最大の部数を持つ日刊紙(フリーペーパー)のイスラエル・ハヨム(Israel Hayom)も経営(所有)しているが、同紙は「ネタニヤフ新聞」と揶揄されるほど、ネタニヤフや与党のリクードについて好意的に報じ続け、イスラエルの言論の極右化や、09年からのネタニヤフ政権の長期化に貢献してきた。共和党を含む米政界は911以来、軍産複合体とイスラエル右派が合体した「軍産イスラエル」の強い影響下にあるが「在米イスラエル右派」として大きな力を持つアデルソンは、共和党が軍産イスラエルに対して従順であるよう仕向けてきた。 (Israel Hayom - Wikipedia) (How Sheldon Adelson is burnishing Donald Trump's image in Israel)

 そんな軍産イスラエルの黒幕であるアデルソンが、軍産の共和党支配や、米国の覇権主義を破壊しようとするトランプに対し、支持を明言したのは驚きだ。トランプは昔から親イスラエルで、彼の娘のイヴァンカはユダヤ人実業家と結婚してユダヤ教徒に改宗している。だが、トランプが大統領になって主張通りの世界戦略をとり、米国が覇権を減退させて中東など世界各地から軍事的に手を引いたら、イスラエルは窮乏する。昨年末、アデルソンが共和党内でトランプを攻撃中傷する運動に資金を出しているのでないかと分析者の間で推測されたが、その後アデルソンがトランプに関して好意的にコメントし、イスラエルの自分の新聞ハヨムにトランプ批判を載せることを禁止し、むしろハヨムに親トランプ的な記事を書かせていることがわかった。アデルソンのトランプ支持は長期的なものだ。 (Sheldon Adelson's Israeli Newspaper Has a Crush on Donald Trump) (Republican donor Adelson and Trump may be aligning on Israel)

 民主党ではクリントンが好戦派を演じ、親軍産・親イスラエルを強くかがけている。好戦的な米国がイスラエルを守ってくれるという従来の構図を維持したければ、アデルソンはトランプ支持を表明せず、クリントンを財政支援するのが良い。しかしアデルソンはトランプを支持した。これはイスラエル右派がトランプを支持したのと同じだ。 (Clinton denounces movement to boycott Israel)

 米国とイスラエルの関係を見ると、すでに現オバマ政権が、イスラエルの仇敵だったイランに対する核兵器開発の濡れ衣を解いてイランを台頭させ、シリア内戦の解決もロシアに任せてしまっている。イスラエルの周辺では、シリア、レバノンが露イランの傘下に入り、エジプトも親米より親露に傾いている。米国の中東支配が崩れ、イスラエルは米国に頼っても意味がなくなっている。クリントンが次の大統領になっても、この傾向は多分あまり変わらない。むしろ、建前だけ2国式解決(パレスチナ国家創設)のパレスチナ問題で、米国は、解決する気がないくせに人権問題やユダヤ入植地建設反対を言ってイスラエルを非難し続けそうだ。 (シリアをロシアに任せる米国) (イランとオバマとプーチンの勝利)

 イスラエルとしては、いっそのこと米国に頼らず、ロシアのプーチンと話をつけ、パレスチナ問題で黙っていてもらうと同時に、イランやその子分のレバノンのヒズボラがイスラエルを攻撃しないようプーチンから圧力をかけてもらう方が効率的だ。ネタニヤフは最近足しげくモスクワを訪問し、プーチンと長時間にわたって会談している。ロシアの中東支配が安定すれば、いずれプーチンの仲裁で、敵同士だったイスラエルとイラン、イスラエルとサウジアラビア、サウジとイランなどが和解できる可能性が増し、イスラエルは国家存続できる。米国(軍産)は長年これらの敵同士の対立を煽ってきたが、プーチンは対照的に中東の安定を重視している。軍産にすり寄るクリントンはロシア敵視を繰り返し表明しており、彼女が大統領になったらイスラエルはロシアに接近しにくい。対照的にトランプは、プーチンを評価しており、イスラエルのロシア接近をむしろ喜ぶ。 (Russia seeks bigger Middle East role through alliance with Israel) (国家と戦争、軍産イスラエル) (イスラエルがロシアに頼る?)

 トランプが共和党を制した直後、イスラエル政府(法務相)は、これまで軍事占領地としてイスラエル軍による軍政が敷かれてきたヨルダン川西岸のうち、パレスチナ人の人口密度が低い「C地域」(広さとして西岸の60%、砂漠が多い)について、これから1年かけて、軍政下の占領地から、国内法が適用されるイスラエル国内に転換していく法的措置をとっていくと発表した。国際的に批判されているユダヤ入植地のほぼすべてがC地域にある。イスラエルはこれまでC地域からパレスチナ人を追い出す作戦を続けてきたが、それでもC地域に住み続けるパレスチナ人にはイスラエル国籍が与えられ、イスラエル国民の2割を占める「アラブ系市民(2級市民)」の仲間入りする。 ('Israeli annexation bombshell imminent') (Shaked move towards 'settlements annex')

 この動きは、イスラエルが2国式を破棄し、西岸の60%の土地を国内に併合することを意味している。イスラエルが西岸併合に向かっていることは以前から感じられ、私も3月に記事にした。西岸併合の正式表明が、トランプの共和党制覇の直後であることが重要だ。西岸をABCの3地域に区分したのは95年のオスロ合意で、AとBがパレスチナ人の人口密集地(Aはパレスチナ自治政府の自治地域、Bは自治政府とイスラエル軍の共同管理)で、それ以外がCだ。パレスチナ人の大半(280万人)はAとBに住んでいるが、ABは飛び飛びに存在し、都市間にあるC地域(パレスチナ人口30万人)がイスラエルに併合されると、残りのAB地域だけでパレスチナ国家を作ることが地理的に不可能だ。 (West Bank Areas in the Oslo II Accord) (西岸を併合するイスラエル)

 パレスチナ人は今後、四方をイスラエルに囲まれた、アパルトヘイト時代の南アフリカの黒人ゲットー(ホームランド)と同様の、都市や農村の体裁をとった収容所で永久に過ごすことになる。ひどい人権侵害が続くことが確定的になったが、オバマ政権は大した反応をしていない。ムスリム排除を掲げる親イスラエルなトランプや、人権を問題にしないロシアのプーチンは、この新事態を看過してくれるだろう。トランプはイスラエルの西岸入植地の拡大を支持している。このように見ていくと、アデルソンのトランプ支持が理解できるようになる。 (Trump to Israel: Keep Building Settlements) (Sheldon Adelson - Wikipedia)

(西岸と隣接する元米英傀儡国のヨルダンでは最近、アブドラ国王の権力が強化され、彼は独裁的な力を手にした。米露が了承しないと、この変更は実現しなかった。もしかするといずれ、イスラエルやロシアやトランプは、AB地区に住むパレスチナがヨルダンに移住することを隠然と奨励し、これをパレスチナ問題の最終解決とするかもしれない。すでにヨルダン国民の6割はパレスチナ人で、ヨルダンの最大野党はパレスチナ人のハマスの系列だ。今後パレスチナ人の割合が増えてもヨルダンが「民主化」されぬよう、国王の権力を強化したのでないか。ヨルダン国王は、自らの権力増大と交換に、パレスチナ人の追加受け入れを了承した可能性がある。中東民主化の時代は去った) (Jordan King Abdullah set to consolidate executive power) (中東問題「最終解決」の深奥)

 イスラエルだけでなく、中東諸国の多くの指導者が、中東を混乱させることしかやらない米国に愛想を尽かし、モスクワを頻繁に訪問し、プーチンにすり寄っていると、オバマ政権の元中東担当責任者であるデニス・ロスが指摘している。大失敗した中東民主化策を推進したブッシュ家(パパは穏健派だったが)は、トランプの台頭、中東民主化策の完全破綻とともに、政界を去る宣言をした。サウジでは、対米自立をめざす30歳のモハメド・サルマン副皇太子が、王政内の対米従属派と暗闘を続けている。モハメド・サルマンが進めるサウジの対米自立も、トランプが大統領になったらぐんぐん進む。サウジの軍事的な対米依存を批判してきたトランプは、サウジの自立を支持(黙認)するだろう。 (Middle East Leaders Give Up on Obama, Turn to Putin - US Diplomat) (サウジアラビア王家の内紛)

 トランプが席巻した結果、共和党で見えてきたのは、これまで合体して共和党や米政界を支配してきた「軍産」と「イスラエル」が、別々の道を歩み出して分裂している新事態だ。軍産はNATO延命のためロシア敵視の道を暴走しているが、イスラエルは隠然と親ロシアに転じている。この事態は、米国がイラクやシリアやエジプトで戦争や下手くそな民主化扇動をやって失敗し、イスラエルがそれに迷惑するようになった数年前から始まっていたが、トランプの台頭で顕在化が一気に進んだ。この傾向は長期的なもので、今後さらに常態化する。軍産イスラエルが米国を支配した時代の終わりが来ている。トランプは、軍産イスラエルのプロパガンダ力の低下を見破り、大統領に立候補して国民の支持を集め、軍産を破壊した。米国は民主主義が生きている。私はこんな米国が大好きだ(皮肉でなく)。

 軍産複合体は、もともと英国が冷戦を起こして米政界を牛耳るために作られた。冷戦終結後、英国は金融重視になって軍産を見捨て、軍産は弱体化(亡霊化)したが、90年代後半にイスラエルが軍産の皮をかぶって(軍産に背乗りして)米国支配に乗り出し、クーデター的に起こされた911事件を機に米政界を席巻した。こうした経緯を見て湧いてくるのは「軍産は、イスラエルが抜けた後、再び亡霊化して消えていくのでないか」という予測だ。イスラエルが軍産抜きで存在し続けるのと対照的に、軍産はぬいぐるみの「皮」でしかなく、誰かが黒幕として動かしてくれないと消滅していく。日本が黒幕になればいい、と対米従属の人は思うかもしれないが、アングロサクソンやユダヤといった、米国内に強い勢力を持つ英国やイスラエルと異なり、戦後の日本は米国内に勢力を持っていないので無理だ(戦後の日本政府は、米国に忠誠を疑われぬよう、日系人と縁を切った)。

 イスラエルについて延々と書いたが、そこから読み取れるもう一つのことは「クリントンは勝てない」ということだ。クリントンはもともとリベラル派なのに、軍産イスラエルにすり寄って大統領になるため、無理をして好戦派としてふるまい、人権侵害だらけのイスラエル極右を大げさに支持してきた。クリントンは、軍産イスラエルの米国支配が今後もずっと続くことを前提に、大統領選を展開してきた。しかし、トランプの台頭と、アデルソンのトランプ支持表明が示すとおり、クリントンの戦略はもはや時代遅れだ。共和党では、もともと草の根の茶会派(孤立主義)だったランド・ポール上院議員がイスラエルにすり寄って大統領選に参戦したが、トランプに負けることが確定して敗退している。 (Rand Paul Will Endorse Donald Trump, the Least Libertarian GOP Nominee in Decades)

 オバマ大統領は3月、雑誌アトランティックのインタビューの中で、クリントンの好戦性を何回も批判している。オバマは、サウジやイスラエルの対米依存を批判する一方でロシアを隠然と持ち上げており、事実上の姿勢がトランプと似ている。オバマは、アトランティック誌に記事を書かせることで、自分がトランプ支持・反クリントンであることを(わかる人にだけわかるように)示したと思える。そのオバマ政権が運営するFBIは最近、クリントンが国務長官時代に私的なサーバーで国家機密を含んだ電子メールのやり取りをしていたことの違法性を捜査している。クリントンにとって選挙戦で最も大事な最後の半年間に入った今、オバマがFBIを使ってクリントンの選挙戦を妨害するかのように、メール事件の捜査が本格化している。クリントンがトランプに負ける公算が高まっている。 (FBI Investigation Of Hillary Clinton May Involve More Than Her Emails) (軍産複合体と闘うオバマ)

 トランプの席巻とともに、世界中の対米依存(従属または牛耳り)の諸国が、米国依存を低めていく「B計画」を強化している。イスラエルやサウジはロシアに接近し、英国は6月末の国民投票を経てEUとの一体化を強めようとしている。ドイツやフランスは、米国が覇権を低下させてNATOが形骸化したらEUの軍事統合を進め、ロシアと和解できる。トランプはNAFTAにも反対なので、カナダやメキシコは様子見に入っている。 (Ron Paul, Secretary of State?)

 韓国は近年、米国と中国の間のバランスをとっており、米国が駐留米軍を撤退すると中国依存が強まる。在韓米軍の撤退には、中国が主催する6カ国協議の進展による米朝対立の解消が不可欠だ。トランプは、中国に圧力をかけて6カ国協議を進めさせる策を表明している。北朝鮮はその時に備え、中国風に背広を着て金正恩が登場する党大会を開いたりして、新たな宗主国である中国に配慮しつつ金正恩の独裁を強化している。米国が新政権になり、北の独裁強化が一段落したら、6カ国協議が再開されるだろう。協議が成功すると、朝鮮半島は米国の覇権を離れ、中国の覇権下になる。この覇権転換は、10年以上前のブッシュ政権の高官だったコンドリーザ・ライスが表明していたシナリオだ。 (North Korea ready to improve relationships with 'hostile' nations) (北朝鮮の政権維持と核廃棄) (日米安保から北東アジア安保へ)

 対米依存諸国の多くは、対米依存以外の「B計画」がある。それが全くない数少ない国の一つが、わが日本だ(ほかは米国に近すぎるカナダぐらいだ)。トランプは、日本だけでなく、韓国、ドイツ、サウジなど米軍が駐留するすべての国に対し、駐留米軍の経費を全額地元国で払うよう求めている。日本以外の国々は、全額払ってまで米軍にいてもらう道理がない。たとえばドイツの米軍基地は、米軍のアフガニスタン占領の経由地として使われ、ドイツの基地がなければ米軍のユーラシア支配が不可能になる。ドイツの米軍基地は、ドイツのためでなく米軍のためにある。ドイツには「不必要なロシア敵視ばかりやる米軍は、ユーラシア支配をやめて出て行ってもらってかまわない」という世論がある。 (Japan ambassador takes veiled swipe at Trump's 'America First' stance)

 このような他国の状況と対照的に、日本だけは「米軍がいないと中国の脅威に対抗できない」「日米同盟が消失(希薄化)したら日本はやっていけない」という、対米依存の見方しかなく、米国に依存しない国策が皆無だ。中国に対する不必要な敵視をしないなら、米軍の西大西洋戦略は、グアムとハワイだけで十分に機能する。日本はこの10年ほどかけて、対米従属を続けるため、尖閣問題などで中国との関係を意図的に悪化させ、中国を深刻な敵国に仕立てた(対照的に、カナダは深刻な敵国を作っていないのでB計画がなくても困らない)。米国の衰退(自滅)傾向は、03年のイラク侵攻あたりから見えていたのだから、日本はオーストラリアや韓国、東南アジア諸国と同様、米国と中国の両方とバランスをとって協調する策をとるべきだった。08年の鳩山政権はそれをやろうとしたが、対米従属プロパガンダ(官僚機構傘下のマスゴミと、その軽信者たる多数の国民の世論)に負けて潰れた。 (尖閣で中国と対立するのは愚策) (多極化への捨て駒にされる日本) (Japan and the rest of the world ignore Donald Trump at their own peril)

 この状況下でトランプが大統領になり、公約通り日本にも米軍駐留費の全額負担を求めてくると、まず日本は全額負担に応じようとするだろう。日本政府は思いやり予算として、すでに米軍駐留費の半分以上を負担している。これを全額にすることは、財政難の日本にとってつらいが、不可能でない。しかしトランプ政権は、在日米軍駐留費を再試算してふくらませ、まだ全額でないぞと言ってきそうだ。トランプの真の目的はおそらくカネでない。世界を対米依存からふりほどき、国際政治の構造を転換(多極化による活性化)し、それによって自国の政治体制を再浄化(軍産を破壊)することが真の目的だろう。

 日本に対してだけ対米従属を認めると、そこから軍産が蘇生・延命しかねない。日本の対米従属は、トランプが進める米国と世界の政治浄化作業にとって邪魔者だ。米政府は、日本に対する嫌がらせを延々と続けるだろう。他の国なら、米国による嫌がらせが反米ナショナリズムの扇動につながり、対米自立につながっていくが、日本では、米国による嫌がらせを無視するマスコミや教育の体制が昔から確立しており、いくら米国が嫌がらせをしても、日本人には全く何も伝わらない。

 しかし米国には、一方的に在日米軍を引き上げる手がある。トランプは、財政赤字の急拡大を打ち出す一方、米国債の債務不履行を示唆し、米連銀によるドル延命策にも否定的だ。1971年のニクソン政権による金ドル交換停止のように、トランプ政権は米国の財政破綻を意図的に演出する可能性がある。そうなると、米政府は緊急策として在外米軍の完全撤退を発動するだろうから、日本がいくら思いやり予算を出しても在日米軍の撤退を止められなくなる。 (Great, Donald Trump Threatened To Default On The National Debt)

 在日米軍が撤退し、日米同盟が形骸化して対米従属ができなくなると、日本はゆるやかに対中従属に転じていくだろう。昨年、オーストラリアの潜水艦を日本が受注しそうな件を機に、中国の影響圏に隣接する西太平洋地域に、日本が豪州やフィリピンなどと一緒に独自の影響圏を作っていく「日豪亜同盟」のシナリオが見えかけたが、それは豪州が潜水艦を日本でなくフランスに発注することを決めたため消えた。日本はこの10年、世界情勢の全体を見据えた上で自国にふさわしい対米従属以外の国家戦略を練る必要があったが、日本の趨勢は逆に、政府も民間も国際情勢に対する誤解と無知と無関心を増大してきた。 (◆潜水艦とともに消えた日豪亜同盟) (見えてきた日本の新たな姿)

 日本が対米従属をやめたら自前で核兵器を持って中国に戦争を仕掛けるという懸念が国際的に存在するが、これは今のところ杞憂だ。日本は以前から国内的に、米国に頼らず自力でどこかの国と対抗(競争、論争、戦争)する気力を国民が持たないようにする教育的な仕掛けが作られている。日本で権力を握る官僚機構は、好戦性や闘争心をできるだけ削ぐ教育を長く続けており、日本は自力で外国と能動的に対立できない国になっている。喧嘩や論争を好む若者は昔よりはるかに少ない。喧嘩や議論が好きなのは、官僚が無力化教育を開始する前に大人になった中高年(じじい)ばかりだ。この無力化の教育策は、対米従属の永続を目的としていたのだろうが、米国が覇権を失って中国が台頭する中で、日本を中国に立ち向かわない、中国やその他の国と競争・論争・戦争できない国にしている。これは「平和主義」でなく「従属主義」として日本で機能している。

 中国は、日本のこうした状況を分析しているだろうから、日本のプライドをできるだけ傷つけないようにして、日本人が中国に感謝するように仕向けつつ、日本が中国にゆるやかに従属する体制(半鎖国・半従属)に移行させようとするだろう(ヤマトの琉球王国化)。官僚機構は、自分たちの権力が維持出来れば「お上」が天皇だろうが米国だろうが中国だろうがかまわないので、中国が日本の官僚隠然独裁を容認することを条件に、中国の策略に喜んで協力するだろう(売国奴)。官僚は、日本がどこかの国に従属している方が国内で権力を保持しやすい。国会でなく官僚が実質的な権力を握る限り、日本の真の民主化や国際的な自立は、この先も半永久的に起こらない。 (民主化するタイ、しない日本)

見えてきた日本の新たな姿

日本の針路の一番の解決策ではないのか?
私もこの考え方が最良の選択ではないかと思います。

以下2016年1月23日   田中 宇より転載


見えてきた日本の新たな姿
2016年1月23日   田中 宇


 日本はこれまで、対米従属以外の戦略を全く持たない国だった。私が知る限り、日本政府が対米従属以外(対米自立)の戦略をわずかでも持った(検討した)のは、1970年代に米国が覇権構造の多極化をめざした時に米国の勧めで日本政府が作った防衛の対米自立策「中曽根ドクトリン」と、2009ー10年の鳩山政権が米中と等距離外交をめざし、結局は官僚機構につぶされた時の2つだけだ。その後、現在の安倍政権にいたる自民党政権は、官僚機構(外務省と財務省)の傀儡で、対米従属一本槍に戻った。

 だが昨年の後半から、安倍政権は、従来の対米従属の国是から微妙に外れる新しい戦略を、目立たない形ながら、次々ととり始めている。それらは(1)日豪での潜水艦技術の共有化、(2)従軍慰安婦問題の解決によって交渉が再開された日韓防衛協定や北朝鮮核6カ国協議、(3)安部首相が新年の会見や先日のFT(日経)のインタビューで明らかにした日露関係改善の試み、(4)中国の脅威を口実とした東シナ海から南シナ海に向けた自衛隊の諜報活動(日本の軍事影響圏)の拡大、などである。 (Japan's Abe calls for Putin to be brought in from the cold) (日韓和解なぜ今?)

 (1)については、昨年11月に配信した記事「日豪は太平洋の第3極になるか」で詳しく書いた。この記事は、有料記事(田中宇プラス)として配信したが、日本国民の全体にとって非常に重要な事項なので、例外的にこのたび無料記事としてウェブで公開した。まだ読んでいない方は、まずこの記事を読んでいただきたい。 (日豪は太平洋の第3極になるか)

 上記の記事の後ろの方に書いた、11月末に日本政府が南氷洋での調査捕鯨を再開して豪州を激怒させた件は、その後、豪州政府が日本政府に、捕鯨再開は潜水艦の発注先を決める際の判断要素にならないと知らせてきた。豪州が、日本と潜水艦技術を共有する気になっていることをうかがわせる。12月中旬には、豪州のターンブル首相が急きょ、日帰りで日本を訪問し、安倍首相と会っている。この訪日も、日豪が潜水艦技術を共有して接近しそうな感じを漂わせている。 (Japan's whaling `separate' from submarine bid) (Malcolm Turnbull's flying visit to Japan to include 'special time' with Shinzo Abe)

 豪州の通信社電によると、米政府の高官は、豪州が潜水艦を独仏でなく日本に発注することを望んでいる。その理由として米高官は、日本の潜水艦の技術の高さを挙げているという。だが私から見ると、より大きな要点は「技術」でなく「国際政治(地政学)」だ。日豪が米国を介さずに軍事協調を強めていくという、米国勢(軍産複合体でなく多極主義者)が昔から希求してきたことが、豪州の潜水艦の日本への発注によって実現していく点だ。豪州の関係者も、日本に発注されそうだと言っている。発注先は半年以内に正式決定される。 (Japan subs 'superior' US believe: adviser) (Japan bid favorite as Canberra mulls decision)

 (2)の日韓関係については、1月4日に無料記事として配信した「日韓和解なぜ今?」に詳しく書いた。慰安婦問題の解決は、日韓安保協定の締結と、北朝鮮核廃棄(棚上げ)に向けた6カ国協議の再開という、2つの動きへの布石となっている。日韓安保協定は、日韓が別々に対米従属してきた従来の状況を、日米・日韓・米韓が等距離の協調関係を持つかたちに転換していく流れであり、日韓の対米自立のはしりとなる(この流れを止めるため、日韓の対米従属派が慰安婦問題で日韓対立を扇動した)。 (日韓和解なぜ今?)

 6カ国協議が達成されると、米朝、南北(韓国と北朝鮮)、日朝の和解につながり、日本と韓国の対米従属を終わらせる。日韓が慰安婦問題を解決した直後から、中国と韓国が6カ国協議の準備を進めていることが報じられる一方、きたるべき協議での自国の立場をあらかじめ強化するかのように、年明けに北朝鮮が「水爆実験」と称する核実験を挙行した。1月11日には、韓国政府の6カ国協議担当者が、日米や中国の担当者と相次いで会合する予定と報じられている。 (北朝鮮に核保有を許す米中) (South Korea says chief nuclear envoy to meet U.S., Japan, China counterparts)

 1月11日に配信した「北朝鮮に核保有を許す米中」で「北朝鮮に核の完全廃絶を迫るのでなく、北がこれ以上の核開発を棚上げすることを協議の目標とすべき」という米国のペリー提案が採用されていくのでないかと書いた。ペリー案と同期するかのように、1月15日には北朝鮮の国営通信社が「(米国が)朝鮮戦争を終わらせる和平条約を(北と)締結するなら、見返りとして、もう核実験をしない」とする北の政府の声明文を報道した。北は「ペリー案をやるなら乗るよ」と言っているわけだ。 (North Korea Would End Nuclear Testing for Peace Treaty, End to US Military Drills)

 しかしペリー案は結局、試案の域を出ないかもしれない。北が核を棚上げ(隠匿)するだけで廃棄しない状態を6カ国協議の「成功」として受け入れることを、米国や日本は拒否すると予測されるからだ。代わりの案として打ち出された観があるのが、韓国が1月22日に選択肢として提起した、北朝鮮抜きの「5カ国協議」だ。 (SKorea calls for 'six-party talks minus NKorea')

 これは一見すると「中国を巻き込んで北に厳しく制裁し、困窮させて核を廃棄させる」という無謀な強硬策だが、もう少し考えると「北に核を廃棄させ、米朝や南北・日朝が和解して、冷戦型(対米従属諸国vs反米諸国)の東アジアの国際政治関係を、多極型の等距離な協調関係に転換する」という6カ国協議の順番を逆転し「先に5カ国の関係を冷戦型から多極型に転換していき、その間に北の核問題を解決し、最終的に米朝・南北・日朝が和解して北を多極型システムに取り込む」という新シナリオの提案に見えてくる。

 北朝鮮以外の5カ国(米中露日韓)の中で、関係が悪いのは、日韓と日露、米露と米中だ。だが、米中露は国連安保理の常任理事国であり、報じられる印象と裏腹に、世界運営上の相互連絡は十分にとっている。米露と米中は「大人の関係」といえる。逆に、現状が「子供の関係」でしかなく、今後の協調関係をゼロから構築していかねばならないのが、日露と日韓だ。6カ国または5カ国の協議によって東アジアの国際政治システムが冷戦型から多極型に転換していく際に、早く開始せねばならないのが、日韓と日露の関係改善であり、だからこそ、昨年末に日韓が慰安婦問題を解決したり、(3)の安倍政権による対露関係改善の模索が行われているのだと考えられる。

 安倍首相は1月17日に報じられたFT(日経)のインタビューで「G7は中東問題の解決にロシアの協力が不可欠だ。(ウクライナ危機以降、G7諸国とロシアの関係が悪化し、G7+ロシアとして作られたG8は事実上解散しているが)G7の議長として自分がモスクワを訪問するか、東京に招待する形でプーチンと会いたい」という趣旨の表明をしている。G7議長とか中東問題といった目くらましをかましているが、要するに、日本国内の合意形成が困難な北方領土問題を迂回して、日露の協調関係を手早く構築したい、という意志表明だ。 (Japan's Abe calls for Putin to be brought in from the cold)

 安倍は、ロシアを評価する一方で、中国の領海的な野心を非難している。だが、中国政府の経済政策は賞賛しており、対立点を軍事安保面に限定している。安倍はまた、アジア太平洋地域の将来像を米国と中国の2大国だけで決めるのはダメだとも述べている。要するに、米中だけでなく日本も、アジア太平洋の地政学的な将来像の決定過程に入れてくれ、と言っている。これは、従来の対米従属の日本の姿勢から、かなり逸脱している。 (Shinzo Abe aims his next arrow at the global stage)

 この点において、今回の(4)の日中対決と(1)の日豪亜同盟の話がつながってくる。安倍の「米中だけでアジア太平洋のことを決めるな、日本も入れろ」という要求は「第1列島線以西は中国、第2列島線以東は米国、その間は日本の影響圏だ」という日豪亜同盟の考え方と一致している。 (日豪は太平洋の第3極になるか)

 そして安倍政権は、2つの列島線の間に日本の影響圏を作っていく具体策として、米国の依頼を受けて南シナ海での中国の動きを監視する自衛隊の軍事偵察網を作ることや、中国包囲網の一環としてフィリピンとの軍事関係を強化することを通じて、東シナ海から南シナ海にかけての2つの列島線の間の海域に、日本の軍事諜報システムを拡大しようとしている。 (Japan PM Abe's cabinet approves largest defence budget)

 日本政府は軍事予算を急増しているが、主な増加分は、中国敵視を口実とした、2つの列島線の間の海域での軍事的な影響圏の構築に使われている。日本にとって、中国との対立は、きたるべき多極型世界において自国の影響圏を創設するための口実として使われている。日本に挑発され、中国が最近、尖閣沖に武装船をさかんに送り込んできている。だが、日中が戦争することはない。中国は、日本が2つの列島線の間を占めることを黙認するだろう。日本の影響圏がある程度構築されたら、日中は再び和解するだろう。 (Japan's far-flung island defense plan seeks to turn tables on China) (Japan says armed Chinese coastguard ship seen near disputed islands) (China steps up incursions around disputed Senkaku Islands)

 国民的には「平和憲法を持つ日本には、領土と領海を超えた地域での軍事的な影響圏の拡大など要らない」と考える人が多いかもしれない。それが政府の政策になるなら、2つの列島線の間の地域は、日本でなく、中国の軍事影響圏になっていく。いずれ米国は第2列島線、つまりグアム以東へと軍事撤退し、その後の空白をぜんぶ中国が埋めることになる。日本は明治以前の、小さな孤立した島国に戻る。2つの列島線の間の地域は、今のところ、米中で将来像を決めていない「空白地域」だ。安倍政権は「空いている地域で、日本がもらって良いものなのだから、もらって当然だ」という考え方なのだろう。

 この件での国家的な意志決定が、今後、国民的な議論や選挙のテーマになることは、多分ない。民意と関係なく、国家の上層部だけでひそかに決められていき、報じられることもないだろう。私の「日本は、2つの列島線の間を、日豪亜同盟として影響圏にするだろう」という予測は、今後もずっと陰謀論扱いされそうだ。とくに日本の左翼リベラルの人々は、私がこの話をするたびに、聞きたくないという感じで何もコメントせず無視する。

 今回の記事の(1)から(4)は、いずれも米国から依頼されて日本が動いている感じだ。しかし、日本がこれらのことを進めていくと、対米従属の体制からどんどん外れていく。米国の戦略は、隠れ多極主義的だ。

 日本が豪州や韓国、ロシアと協調関係を強め、2つの列島線の間が日本の影響圏になっていくと、北朝鮮をめぐる状況が今のままでも、在日米軍の海兵隊がグアムに撤退する話が再燃するだろう。日本が、国際的な影響圏を持つような大国になるなら、防衛を米軍に依存し続けることはできない。沖縄の基地問題は、従来のような「左」からの解決でなく、日本が影響圏を持つことで在日米軍が出ていくという「右」からの解決になるかもしれない。

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