シーア派の権利尊重を求めていたニムル師を処刑したサウジは軍事的な緊張を高めて生き残りを図る

原油価格の低落により窮地に陥っているサウジアラビアの博打?
以下桜井ジャーナルより転載


シーア派の権利尊重を求めていたニムル師を処刑したサウジは軍事的な緊張を高めて生き残りを図る


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 サウジアラビアにおけるシーア派の指導的立場にあったニムル・バキル・アル・ニムル師が1月2日に同国で処刑された。この国のサルマン・ビン・アブドルアジズ・アル・サウド国王がトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と会談した数日後のことだ。

 処刑を受け、シーア派は各地で抗議活動を展開、イランの首都テヘランのサウジアラビア大使館やメシェドのサウジアラビア領事館へは数十本の火炎瓶が投げ込まれ、建物の一部が焼失する事態に発展、サウジアラビア外相はイランとの外交関係の断絶を宣言した。ここまではサウジアラビアのシナリオ通りという見方がある。

 サウジアラビアやトルコはネオコンやイスラエルと手を組み、アル・カイダ系武装集団やそこから派生したIS(ISIS、ISIL、ダーイッシュなどとも表記)を使って軍事侵略を繰り返し、残虐性をアピールすることで反イスラム感情を煽ってきたが、今回は「スンニ派対シーア派」という構図を作り出そうとする思惑も含まれているだろう。

 ニムル師は自由選挙を求めていたほか、サウジアラビアにおけるシーア派の権利が尊重されないならば、東部地域を分離すべきだとも主張していた人物。2012年7月に逮捕された際、サウジアラビアの警官から銃撃されて足を負傷している。そして2014年10月にニムルは死刑を宣告されていた。

 混乱の火を付けたサウジアラビアは現在、厳しい状況にある。始めた戦争が思惑通りに進まず、原油価格の引き下げが自らの首を絞めることになって財政赤字が深刻化、緊縮財政に乗り出そうとしているのだが、生活費の補助が打ち切られたならば、街に溢れる失業者がこれまでと同じように従順でいる保証はない。保有する株式や債券の売却を始めると投機市場が動揺、ペトロダラーの仕組み崩壊でドルを基軸通貨とする仕組みが揺らぐ可能性もあるだろう。

 サウジアラビアはアメリカ、イギリス、フランス、トルコのNATO加盟国やカタール、イスラエルなどと手を組んでリビアやシリアで体制転覆プロジェクトを始めたが、9月30日にロシア軍がシリアで始めてから歯車が完全に狂っている。ニムル師の処刑直前にサウジアラビアとトルコの首脳が会った事実は興味深い。傭兵の雇用や提供を含む戦費を負担してきたサウジアラビア、兵站ラインの出発点で盗掘石油の輸送先でもあるトルコが最も追い詰められている。IS/アル・カイダ系武装集団をこの2カ国も使っている。こうした武装集団へ参加している戦闘員の多くはワッハーブ派だ。

 2001年9月以降、アメリカ政府の政策を主導してきたネオコン/シオニストは中東/北アフリカやウクライナを戦乱で破壊、中東/北アフリカではワッハーブ派、ウクライナではネオ・ナチ(ステファン・バンデラ派)が戦闘員の中心になっている。ワッハーブ派はサウジアラビアの国教。リビアに続いてシリアを属国化し、さらにイランを破壊しようとしている。

 アメリカが主導する連合軍は2003年3月にイラクを先制攻撃、ネオコンが1980年代から目論んでいたサダム・フセインの排除に成功する。このフセインを権力の座につけたのはCIAで、1980年代のアメリカでは彼をペルシャ湾岸産油国の守護者と見なす勢力が支配層の内部に存在、1991年の湾岸戦争でジョージ・H・W・ブッシュ政権はフセインを排除せずに停戦、ネオコンを怒らすことになる。その際、ポール・ウォルフォウィッツ国防次官はイラク、シリア、イランを5年以内に殲滅すると語ったという。

 フセインを排除した後、ネオコンは自分たちの傀儡政権を樹立しようとしたものの、失敗。その後、シーア派の政権が続くことになり、イランとの関係を深めていく。ヌーリ・アル・マリキを首相とする政権もシーア派が主導していたが、このマリキは2014年3月、サウジアラビアやカタールを反政府勢力へ資金を提供していると批判している。

 その翌月に行われた選挙の結果、第1勢力はアル・マリキを支える「法治国家連合」になって全328議席のうち92議席を獲得、シーア派連合では157議席に達し、本来ならマリキが次期首相に指名されるはずだったが、それを大統領は拒否している。アメリカの意向が影響した可能性が高い。その後もアメリカはイラクの強い影響力を保持、ロシアとの関係が強まることを阻止している。

 イラクの場合、対テロ、情報、治安などの責任者はアメリカ側の意思で挿げ替えられ、ISに対する攻撃は、部隊の選定や攻撃の日時決定もアメリカ軍が行っている。ISの戦闘員が逃走できるようにしているわけで、その一部はシリアへの増援に使われている可能性もあるだろう。こうした情報が正確なら、ラマディ奪還は茶番だったということになる。

 12月の初めにトルコ軍は25台のM-60A3戦車に守られた部隊をイラクの北部、モスルの近くへ侵攻させ、イラク政府の抗議にもかかわらず、居座っている。また、12月18日にアメリカ軍はファルージャでISと戦っていたイラク軍の部隊を「誤爆」、20名とも30名とも言われる兵士を殺害した。負傷兵も同程度いたという。イラク議会の安全保障国防委員会の委員長が公表した情報だ。

 そして12月28日、イラク政府はラマディをISから奪還したと宣言した。攻撃の数日前には約2000名の戦闘員がいたはずなのだが、制圧のために入った市内は死体がいくつかあるだけで蛻の殻だったという。ISの幹部はヘリコプターでどこかへ運び去ったとする話も伝わっている。アメリカ軍の内部にはIS/アル・カイダ系武装集団を危険だと考えるグループを存在するが、1991年にウォルフォウィッツが口にしたプランを実現するため、そうした戦闘集団を利用しようとしていると言えるだろう。

 IS/アル・カイダ系武装集団を使った政権転覆プロジェクトはロシアの空爆で崩れはじめ、シリアのことはシリア国民が決めるべきだとするロシア政府の主張に同調する流れができつつあるのだが、ネオコン、サウジアラビア、トルコはあくまでもシリアのバシャール・アル・アサド政権の打倒、イラン攻撃に執着している。

 軍事侵略が思惑外れになり、政治経済的に窮地に陥ったサウジアラビアは、ニムル師を処刑することでイランを刺激して軍事的な緊張を高めて問題の外交的な解決を破綻させ、国内では戒厳令状態にして反乱を封じ込めようとしているのかもしれないが、すでにサウジアラビアがIS/アル・カイダ系武装集団のスポンサーだということも広く知られるようになっている現在、逆効果になる可能性は強い。



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