トランプ大統領と呼ばれる危険な欺瞞

政治というプロレスみたいなショーを見せられているだけなのか?
来年の1月19日が始まれば解る。というコラム


マスコミに載らない海外記事 2016年11月25日より転載


トランプ大統領と呼ばれる危険な欺瞞
F. William Engdahl
2016年11月25日
New Eastern Outlook

トランプ大統領と呼ばれるプロジェクトが、正式に始まるのは、わずか二ヶ月後だ。だがドナルド・トランプは世界の多くが既に彼を思い描いている人物ではなく、彼らの希望も夢想も実現することはない。ドナルド・トランプは、トランプの親密な支援者の一人が、かつて普遍的ファシズムと呼んだ、連中が完全に支配する世界秩序、新世界秩序を、何度もしつこく、作りだそうとしている同じ退屈ないつもの家父長支配者連中によるもう一つのプロジェクトに過ぎない。いくつかの演説にある時折の素晴らしい言説は無視しよう。言うは易しだ。現在の閣僚任命という早い時期に姿を現しつつある狙いを検討すれば、ドナルド・トランプも、オバマや、彼の前任ブッシュ、ビル・クリントンや、クリントンの“教師”で、彼の前任ジョージ・H.W・ブッシュなどと同じで、戦争と、グローバル帝国が狙いであることがわかる。世界中がこれから、トランプ大統領で経験することになるものに良いことなど皆無だ。

‘紳士淑女の皆様、ショーの始まりです!’今日ご紹介するのは、ドナルド・トランプです。彼は皆様方の多くがお聞きになりたいことだけを語ってくれるでしょう。楽しませるのが上手な芸人トランプが、皆様に彼がアメリカを再び偉大にすると語ります。トランプは、少なくとも300万人の違法移民を、リオ・グランデ川対岸に送り返します。トランプは、ムスリム同胞団を、テロ組織だと宣言する法案を導入します。トランプは、中国や他の低賃金の国々から、アメリカに雇用を取り戻します。トランプは、プーチンじっくり話し合って、事態をおさめるよう、何らかの取り引きをまとめます。トランプは、オバマのイラン核協定を反故にします…

政策や候補者の考え方のまじめな議論というより、ハリウッド“D”級映画状態だったこの選挙運動で、トランプは、いわゆるブルーカラー労働者のみならず、1970年代以来、収入が実質的に減り、権利を奪われてきた中流階級の“声なき大衆”が共感する発言をすることが多かった。トランプは、ロナルド・レーガンという名のかつての俳優大統領と同様、彼が誠実であるかのように話す才能に恵まれているのだ。

トランプは、草の根革命か?

家父長的支配者- デイヴィッド・ロックフェラーやジョージ・ハーバート・ウォーカー・ブッシュなどの愛情のない老人連中や無名の他の連中- が、あらゆるスキャンダルを乗り越えて益々強力になる候補者トランプの政治的天才に圧倒されるあまり、彼らは驚嘆し、裏をかかれ、こういう事態になるのをうなるばかりだなどと一秒たりとも想像すべきではない。

トランプ大統領は、連中と、連中のシンクタンクによって、事細かに計画されているのだ。ごく単純に、連中が、ヒラリー・クリントンが代表する、戦争と、ロシアや中国との対決と、カダフィであれ、ムバラクであれ、あるいはプーチンであれ、連中に反対する、あらゆる政治指導者全員を、カラー革命で不安定化する政策を継続すれば、世界の膨大な部分に対する権力、極めて重要な地政学的権力を失うことになっていたはずなのだ。

比較的小さなアメリカの旧植民地の大統領が、アメリカ大統領を“売女の息子”と呼んであからさまに攻撃し、中国で、フィリピンのアメリカ合州国からの“離脱”を宣言するのをおそれず、他の国々も、次々と、ロシアや中国や、両国による一帯一路ユーラシア・インフラ大プロジェクトを巡るユーラシア経済の結束の進展に、より密接な経済的、政治的協力を進める今、代案の大統領を据える頃合いなのは明らかだった。

代案は、カジノの大物で、政治的に白紙状態で、権力にとりつかれた人物で、彼らの計画から外れないようる恐喝する理由に事欠かない、人々を恐れさせる上で大いに才能がある群で一番のオス、ドナルド・トランプというわけだ。

通常の心理学的定義を使うとすれば、ソシオパス、反社会的性格者という単語がぴったりだろうと思う。“文化の中の道徳や法的標準への尊重の欠如が特徴の反社会的な人格障害”。ナルシシズム、自己陶酔というのも、ふさわしい用語だろう。“極端な身勝手さ、自分自身の才能の大げさな評価、賞賛への願望”11年前のビリー・ブッシュとの“更衣室の会話”だといって彼が切り捨てたものだけでなく、彼の自叙伝にある、悪徳弁護士で指導者のロイ・コーンと、スタジオ54で、鼻からコカインを吸った昔の悪ふざけなどの記述を読み、彼の本当の生活史をもっと詳しく見よう。彼は決してJFKでも、シャルル・ド・ゴールでもなく、近いとさえ言えない。

私の確信をはっきりと申しあげておくので、2017年1月20日以降、トランプ大統領の政策が進展してから、私が正しかったか否かを確認するのに、これを思い出して頂きたい。ドナルド・トランプは、経済的あるいは産業的、あるいは他の形で、現在、地政学的に、勝てる立場にないウオール街の戦争銀行とアメリカ軍産複合体により、アメリカに戦争準備をさせるため、大統領の座に送り込まれたのだ。彼の仕事は、ディック・チェイニーやポール・ウォルフォウィッツのアメリカ新世紀プロジェクトが、2000年9月に報告した通り、“アメリカ防衛再建”をして、アメリカ世界覇権崩壊の流れを、彼らが逆転できるように、アメリカ合州国を復権させることだ。

この準備をするため、ロシアと中国との間で発展しつつある深いつながりを決定的に弱体化する欺瞞戦略が、最優先項目だ。それは既に始まっている。ドナルドから、モスクワのウラジーミル恐怖大王に、友好的な電話がかけられた。ロシア・マスコミはオバマ後の米露関係新時代に関して、幸福感に包まれている。そこに突然、戦争挑発屋のNATO事務総長、ストルテンベルグまで、ロシアに対して、うっとりするようなことを猫なで声で言い出した。カリフォルニア州下院議員で、プーチンの知り合いの、ダナ・ローラバッカーが国務長官になる可能性があるというアイデアが漏洩された。これは典型的なキッシンジャーの勢力均衡地政学-不倶戴天の敵二つのうち、弱い方ロシアと組み、より強い方、中国を孤立化させるもののように見える。たぶん、ウラジーミル・プーチンは、これに引っかかるほど、素朴でも、阿呆でもないだろうが、それがトランプ・ハンドラーの策謀だ。深化するロシア-中国協力を阻止する、そうした戦略を、この夏の発言で、ズビグニュー・ブレジンスキーも強く促していた。

1992年のブッシュ-ウォルフォウィッツ・ドクトリンを元にした-ユーラシアにおいて、いかなる国や国々の集団が、アメリカの単一超大国覇権に異議を申し立てることに対しても先手をうつという世界支配戦術を転換するという決定的役割を演じるべく(我々有権者によってではなく)選ばれた以上-彼の閣僚と主要政策顧問の選択は極めて重要だ。既に我々は、トランプ大統領と呼ばれる芝居に出演するよう選ばれた配役と、唯一の超大国戦略を設定しなおすために出現しつつある新策謀の概要を見ることができる。

配役表

この文章を書いている時点で、いくつかの主要役職者が指名されている。マイケル・フリン中将が、大統領の国家安全保障顧問だ。カンザス州のマイケル・ポンペオ下院議員がCIA長官だ。ジェフ・セッションズが司法長官で、スティーブン・K・バノンが、ホワイト・ハウス新設役職“首席戦略官”で大統領上級顧問だ。

本記事では、トランプの極めて重要な国家安全保障顧問となり、ホワイト・ハウス入りするであろうマイケル・フリン元中将に注目したい。いつもは洞察力が鋭いブロガーや専門家たちが、フリン任命を大喜びで歓迎している。彼らは、アメリカによる、ISISや、アルカイダのヌスラ戦線などのイスラム・テロ集団への秘密裏の支援に反対したことを引用している。2003年に、彼はイラク侵略は“戦略的な失敗”だったと公に発言している。しかも、フリンは、ロシアとの戦争を挑発するのには反対で、ISISや他の過激テロ組織に対し、戦争をするよう主張している。フリンが、対聖戦戦争よりも、対ロシア戦争を、より優先事項とするオバマの決定に反対し、 その目的からシリアのアサド大統領との協力を主張したことで、実際、オバマは、国防情報局長官のフリンを首にした。

対ISIS戦争、そして、おそらく、ヒラリー・クリントンやオバマ政権に大いに愛されたムスリム同胞団に対するフリンの立場は、平和を志向する人物のものではない。むしろ、それは、冷徹な、抜け目のない軍事専門家、戦争というグローバルな課題を推進するためにネタニヤフのリクード党との協力を優先する軍事専門家のものだ。

アサドと、ISISと、イラクに関するフリンの発言は、他の物事と無関係にでなく、ムスリム同胞団や他の狂信的なイスラム教テロリストを訓練して、帝国の代理戦争をしかけるという何十年もの長きにわたるCIAとペンタゴン政策が、とんでもない裏目にでたと考えている軍事諜報専門家のものとして見るべきなのだ。トルコのフェトフッラー・ギュレンのネットワークを利用した、CIAによる7月15日のクーデター未遂のみならず、CIAが支援するあらゆる聖戦、つまり、クリントン国務長官の対ムバラク戦争から、対カダフィに至るまで、多くのイスラム世界に対し、アメリカが支援する、ワシントンに忠実なムスリム同胞団テロ政権を押しつけようとするものは、ことごとく失敗した。その効果は、世界の大半が、ワシントンと、連中の絶えざるえざる代理戦争から離反することだった。

諜報軍事戦略家なら、他の案を採用する頃合いだと言うはずだ。これをフリンはしようとしているのだ。ムスリム同胞団や連携したテロ組織を利用するワシントンの政策をやめ、イスラエルの右翼ネタニヤフ・リクード政権とのより親密な全面協力復活への移行を彼は推進するだろう。

ベン・シャピロの保守的なブログ、デーリー・ワイアが報じている発言では、テロと中東問題に関するドナルド・トランプの顧問であるワリード・ファーレスが、エジプトマスコミに、こう言った。(オバマ政権が強く拒否し、議会がそうするのを阻止してきた)ムスリム同胞団をテロ組織として非合法化する取り組みをドナルド・トランプは支持する。

私の新刊、The Lost Hegemon: Whom the gods would destroyをお読み頂いた方なら、決して私が、1950年以来、CIAの闇の同盟者であるムスリム同胞団の友人などではないのをご存じだ。しかし現実は“私の敵の敵は私の味方だ”という言葉ほど単純なものではない。ドナルド・トランプのテロと中東に関する首席顧問ワリード・ファーレスは民主主義防衛財団FDDという名のきわめて親ネタニヤフの小規模シンクタンク上席研究員でもある。

民主主義防衛財団?

ワシントンを本拠とする民主主義防衛財団は、2001年9月11日の後、 ウェブサイトで宣言している通り“多元主義を推進し、民主的価値観を守り、テロを推進するイデオロギー戦うため”元共和党全国委員会の広報責任者、クリフォード・メイによって創設された。

民主主義防衛財団で注目すべき点は、次期大統領トランプに中東とテロについて助言する上席研究員、ワリード・ファーレスが、資金の要であることだ。民主主義防衛財団は、ベンヤミン・ネタニヤフと、イスラエルの地政学的な狙いに密接に結びついたアメリカ人億万長者集団によって資金提供されている。寄進者たちには、イスラエルのマスコミによれば、最後の重要な日々に、トランプの選挙運動に2500万ドル出した有名なラスヴェガスとマカオのギャンブル・カジノの大物シェルドン・アデルソンもいる。他のFDDに対する財政支援者たちには、親イスラエル組織に資金提供する長い実績を持ったユダヤ系アメリカ人たちがいる。ホーム・デポの共同創設者バーナード・マーカス。巨大ウイスキー事業相続人である、サミュエルと、エドガー・ブロンフマン。ウオール街の億万長者投機家、マイケル・スタインハートと、ポール・シンガーと、U.S. Healthcareの創始者、レオナード・アブラムソンだ。

イランとの核合意と経済制裁解除というオバマの狙いに反対して証言するよう依頼されたワシントンの主なシンクタンクが民主主義防衛財団で、対イラン計画に反対する証言を、17回しているのも驚くべきことではない。民主主義防衛財団のエグゼクティブ・ディレクター、マーク・ ドゥボウィッツは、2010年に実施された対イラン経済、イラン石油輸出制裁企画の手伝いまでしていた。

更に、民主主義防衛財団の他の多くの役職も、テルアビブのネタニヤフ政権の意見を反映している。14年間、AIPACの広報部長をつとめたトビー・ダーショウィッツが、民主主義防衛財団の政府関係と戦略担当副理事長だ。AIPAC、つまりアメリカ・イスラエル公共問題委員会は、ジョン・ミアシマイヤー・シカゴ大学教授によれば、“アメリカ合州国議会を、その権力と影響力で支配しているイスラエル政府の手先”だ。トランプは、2016年3月のアメリカ・イスラエル公共問題委員会年次総会での、メイン講演者だった。

マイケル・フリンとマイケル・レディーン

反ムスリム同胞団の国家安全保障顧問マイケル・フリンに話を戻そう。フリンはCIA長官に任命されたマイケル・ポンペオとともに、ネタニヤフの本心に沿った立場、オバマ・イラン核合意を反故にすべきであり、イランをテロ支援国家と呼ぶべきであることに同意している。

フリンは、マイケル・レディーンと共著も書いている。人は誰とでも共著を書くわけではない。私は知っている。共著者は、考え方が自分と完全に一致する人物でなければならない。マイケル・レディーンは、興味深いことに思えるのだが、民主主義防衛財団で、研究者をつとめている。金融投資家のジム・リカーズも民主主義防衛財団の経済制裁・違法金融センターの諮問委員会メンバーであり、トランプ・ブロジェクで、最高の地位にあると見られると噂される元CIA長官ジェームズ・ウルジーは、FDD指導者会議メンバー四人の一人であることは注目に値する。

今年、2016年、レディーンは、NSC長官に指名されたマイケル・フリンと、Field of Fight: How to Win the War Against Radical Islam and its Allies(戦いの舞台:過激イスラムと、その同盟者との戦争で、いかにして勝利するか)と題する本を共著した。レディーンとトランプのNSC長官とのつながりは、ちょっとしたものなどでないのは明らかだ。

レーガン時代に、G.H.W.ブッシュと彼のCIA同窓ネットワークによる違法なイラン-コントラという武器・コカイン取り引きに連座したこともあるレディーンは、大昔、私が一度見たことがあるが、現在ほぼ捜すことがとても困難な博士論文を書いた。その題名は“普遍的ファシズム”というもので、ムッソリーニのイタリア・ファシズムを、世界的に適用する可能性を扱っていた。いうなれば、ファシストによるワン・ワールド秩序だ。

表面に出ないことを好んでいるマイケル・レディーンは、おそらく、ネオコンのゴッドファザーと表現するのが最適だろう。ポール・ウォルフォウィッツ、ディック・チェイニー、ドナルド・ラムズフェルドらのアメリカ戦争派閥の政策は、彼が形作ったのだ。

ブッシュ-チェイニー-ウォルフォウィッツの対イラク戦争が進行中の2003年、レディーンは“現代テロの生みの親、イランに集中すべき時期”と題する演説を、親ネタニヤフの安全保障問題ユダヤ研究所(JINSA)で行っており、その中で、彼はこう断言していた。“外交の時代は終わった。今やイラン解放、シリア解放とレバノン解放の時だ。”アメリカの対アサド戦争のほぼ十年前の2003年当時、イラン、シリアとレバノンを“解放”するため、アメリカ率いる“全面戦争”によって、イラク、イランとシリアは“自由”を得るべきだと、レディーンは断言していた。

次期大統領ドナルド・トランプの閣僚選任過程に近い筋の情報によれば、誰が選ばれるかに関しては、二人の人物が決定的な影響力を持っている。35歳の政治経験の浅いトランプの娘婿ジャレッド・クシュナーと、マイケル・フリンだ。トランプは、この二人に、極秘の大統領ブリーフィングへの同席まで求めていた。

ウィンストン・チャーチルは、かつてこう言った。“戦時には、真実は非常に貴重なので、真実には常にウソという護衛をつけなければならない。”アメリカを新たな戦争にそなえるためのトランプ大統領プロジェクトは、既にウソという護衛がしっかりついているのは、もはや明らかだ。

F. William Engdahlは戦略リスク・コンサルタント、講師で、プリンストン大学の政治学学位を持っており、石油と地政学に関するベストセラー本の著書で、これはオンライン誌“New Eastern Outlook”への独占寄稿。

記事原文のurl:http://journal-neo.org/2016/11/25/the-dangerous-deception-called-the-trump-presidency/
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